水泳の大会における最適なクーリングダウンとは

今回は水泳のクーリングダウンについて考えていきます。

大会ではレースの間にクーリングダウンをします。

このクーリングダウンはアクティブリカバリー(積極的休養)とも呼ばれ

パッシブリカバリー(消極的休養(何もしない休養))よりも

その後のレースの成績が改善します。

では,アクティブリカバリーは

どの程度の距離をどれくらいのペースで行えばよいでしょうか。

アクティブリカバリーの最適距離

アクティブリカバリーの最適距離については

明確な結論が出ていません。

 

Vescoviらは100人の水泳選手の

レース後の血中乳酸濃度を測定した結果,

100mと200mのレース直後の血中乳酸濃度が最も高いことを報告しました1)

その理由として彼らは

50mのレースではATP-CP系がエネルギー供給に主に用いられるのに対し

100,200mのレースではエネルギー供給の37〜63%がグルコースであり,

乳酸を生成する無酸素運動の割合が多いためと考察しています。

 

また,

彼らはレース後のアクティブリカバリーの距離を以下のように推奨しています。

 

アクティブリカバリーの推奨距離

自由形

50m 男性:1000〜1200m,女性:600〜800m

100m 男性:1300〜1500m,女性:800〜1000m

200m 男性:1300〜1500m,女性:800〜1000m

400m 男性:1300〜1500m,女性:800〜1000m

800m 男性:1000〜1200m,女性:600〜800m

1500m 男性:800〜1000m,女性:600〜800m

 

背泳ぎ

50m 男性:1000〜1200m,女性:600〜800m

100m 男性:1300〜1500m,女性:1000〜1200m

200m 男性:1300〜1500m,女性:1000〜1200m

 

平泳ぎ

50m 男性:800〜1000m,女性:500〜800m

100m 男性:1200〜1400m,女性:800〜1000m

200m 男性:1200〜1400m,女性:800〜1000m

 

バタフライ

50m 男性:1200〜1400m,女性:700〜900m

100m 男性:1200〜1400m,女性:800〜1000m

200m 男性:1200〜1400m,女性:800〜1000m

 

個人メドレー

200m 男性:1200〜1400m,女性:800〜1000m

400m 男性:1200〜1400m,女性:800〜1000m

 

 

疲労物質が最も生じていると予想される100,200m競技については

アクティブリカバリーの距離が長くなっているのがポイントです。

また,

どの競技であっても1000m程度はアクティブリカバリーを行った方がよさそうです。

 

 

アクティブリカバリーに最適な運動強度

これは乳酸閾値付近の運動強度が最も効果的とする報告があります2,3)

 

研究を一部紹介します。

Greenwoodらは200ヤードのタイムトライアルを実施し

その直後に10分間のリカバリーを行いました3)

リカバリーの詳細は以下の通りです。

 

1.乳酸閾値以下の運動強度で泳ぐアクティブリカバリー

2.乳酸閾値付近の運動強度で泳ぐアクティブリカバリー

3.乳酸閾値以上の運動強度で泳ぐアクティブリカバリー

4.座っているだけのパッシブリカバリー

 

リカバリー終了後,

再度200ヤードのタイムを測定し

1回目と2回目の200ヤードのタイムを

各リカバリーで比較しました。

その結果,2本目の200ヤード泳のタイムが最もよかったのが

乳酸閾値付近の運動強度で泳ぐアクティブリカバリー

最も悪かったのがパッシブリカバリーとなりました。

 

この結果から,

乳酸閾値付近の運動強度が

アクティブリカバリーで用いる運動強度として最適であることが示唆されました。

 

まとめ

アクティブリカバリーの運動強度には

乳酸閾値付近の運動強度が最適だと考えられます。

 

効果的なアクティブリカバリーとパッシブリカバリーの組み合わせ

アクティブリカバリーとパッシブリカバリーを組み合わせて

リカバリーの効果を検討した報告があります4)

 

Toubekisらは100m泳を2回行い

そのレース間のリカバリーを以下のように設定しました。

 

1.「5分間のアクティブリカバリー,10分間のパッシブリカバリー」

2.「10分間のアクティブリカバリー,5分間のパッシブリカバリー」

3.「15分間のパッシブリカバリー」

 

なお,アクティブリカバリーの運動強度は

セルフペースとしています。

 

実験の結果,2本目の100m泳のタイムが最もよかったのは

「5分間のアクティブリカバリー,10分間のパッシブリカバリー」

でした

 

彼らは

5分のアクティブリカバリーは

pHの回復,乳酸の除去に効果的であり

10分のパッシブリカバリーは

クレアチンリン酸の回復に十分な時間であったと考察しています。

 

また,他の研究では

3.5分のアクティブリカバリーと

2.5分のパッシブリカバリーの組み合わせでは

50m泳の成績が変化しなかったとする報告もあります5)。

この研究結果においては,

2.5分のパッシブリカバリーで

クレアチンリン酸が十分に回復しなかった可能性も考えられます。

 

まとめ

アクティブリカバリーとパッシブリカバリーの最適な組み合わせは

のちのレースで用いるエネルギーも関係してくると考えています。

50m競技であればクレアチンリン酸の回復を優先するため

パッシブリカバリーの量は多い方がいいかもしれません。

一方,100m以上の競技であれば

疲労物質の積極的な除去を目的として

アクティブリカバリーを十分に行う必要があると考えています。

 

最後に

大会は複数のレースが予定されてることがほとんどです。

2回目,3回目以降のレースでも

高いパフォーマンスを出すために

アクティブリカバリー,パッシブリカバリーについて

理解することは非常に有意義と考えます。

 

参考文献

1) Jason D. et al., Blood lactate concentration and clearance in elite swimmers during competition. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2011 6. 106-117

2) McMaster WC. et al., Enhancement of blood lactate clearance following maximal swimming. Effect of velocity of recovery swimming. Am J Sports Med. 1989 17;472-477

3) Greenwood JD. et al., Intensity of exercise recovery, blood lactate disappearance, and subsequent swimming performance. J Sports Sci. 2008 Jan 1;26(1):29-34.

4) Toubekis AG. et al. Swimming performance after passive and active recovery of various durations. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2008 3. 375-386

5) Toubekis AG. et al., Influence of different rest intervals during active or passive recovery on repeated sprint swimming performance. Eur J Appl Physiol. 2005 93;694-700


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