トレーニング強度の設定方法 (Critical Velocity)

今回も水泳におけるトレーニング強度の設定方法について考えていきます。

今回紹介する概念は「Critical Velocity」です。

Critical Velocityとは

wakayoshiらによると

「疲労困憊に至ることなく長時間泳ぎ続けられる最大乳酸定常の泳速」

と定義されています1)

 

また,

スイミングファーステストでは 「Critical Swimming Speed (CSS)」と紹介されています。

CSSのスイミングファーステストにおける定義は

「長時間にわたってスピードを維持できる最大の負荷」となっており

乳酸閾値と同義としています。

 

しかし、最大乳酸定常と乳酸閾値が指す内容は

生理学的に全く違います。

また、最大乳酸定常と乳酸閾値の時の運動強度も異なってきます。

 

とりあえず今回は

スイミングファーステストの定義,

つまりEN2で用いるトレーニング強度算出の手がかりになる…

という視点で話を進めていきます。

 

Critical Velocityの有用性

Critical Velocityは比較的簡単に

持久力トレーニングに用いる運動強度を計算できます。

それが大きな利点です。

 

血中乳酸濃度も測定しませんし,呼気ガスもとりません。

3000m泳や30分間泳のように時間もかかりません。

Critical Velocityの算出には

数回のタイムトライアルを実施するのみです。

 

トレーニング時間の限られた人にとっては

非常に魅力的な方法です。

 

Critical Velocityの求め方 1,2)

実際にCritical Velocityを求めるにはどうしたらいいのでしょうか。

順を追って説明します。

 

1. タイムトライアルを実施する

50, 100, 200, 400のいずれかの距離のタイムを

飛び込みをせずに測定します。

3種目以上の測定が望ましいようです。

同一日にタイムトライアルを実施するときは

十分に休息をとって行います。

1日でタイムトライアルを実施する場合は最大2種目までとし

3種目以上タイムトライアルを実施するときは日を分けます。

 

2. グラフを作成する

縦軸を距離,横軸をタイムとして

タイムトライアルの結果の散布図を描きます。

 

3. 回帰直線を描く

散布図から回帰直線を描きます。 エクセルを使えば簡単。

 

4. Critical Velocityを求める

得られた回帰直線の傾きを算出します。

この傾きがCritical Velocityです。

 

Critical Velocityの求め方の例

ある人のタイムトライアルの結果

50m : 28.6秒

100m : 66秒

200m : 142秒

400m : 273秒

というデータを得ました。

 

この結果を元に回帰直線を算出すると

Y = 1.433 × X +4.916

この中のXの係数 1.433 (m/秒) が

Critical Velocityとなります。

(下図は計算に用いた図と回帰直線)

figure.001

 

Critical Velocityの使用方法

トレーニング距離をCritical Velocityの値で割ると

そのトレーニングのEN2の目標タイムが算出できます。

例えば Critical Velocityが1.433の人が100m泳ぐ時は

100÷1.433 = 69.8

よってEN2を行いたい場合は

100mを約1分10秒で泳げばよい…ということになります。

 

その他のトレーニング強度への応用

スイミングファーステストでは以下のように述べられています。

 

EN1のターゲットタイムは

Critical Velocityの100mあたりのタイムに3〜6秒加えた値とする

EN3のターゲットタイムは

Critical Velocityの100mあたりのタイムより速い値とする

 

しかし,このタイム設定ついては文献的根拠はありません。

 

まとめ

Critical Velocityは乳酸閾値付近すなわちEN2で用いる運動強度を

簡便に算出できる指標でした。

しかし,Critical VelocityはT-3000よりも速いタイムが出る印象です。

また、今回の例でいえば

100mのタイムトライアルの結果が66秒で

EN2の100mのターゲットタイムが約70秒というのは

EN2のターゲットタイムとしては明らかに速すぎると思います。

 

従って,

wakayoshiらの報告にもあるように

Critical Velocityは乳酸閾値よりも高い運動強度となる

血中乳酸定常の運動強度を示している可能性があります。

 

Critical Velocityは簡便にトレーニング強度を算出できる反面

測定結果が示す数値の解釈が難しい指標です。

今回はここまでとし

Critical Velocityについては

改めてまた特集したいと思います。

 

参考文献

1) Wakayoshi K. et al., Determination and validity of critical velocity as an index of swimming performance in the competitive swimmer. Eur.J.Appl. Physiol. 64:153-157, 1992

2) Wakayoshi K.et al., A simple method for determining critical speed as swimming fatigue threshold in competitive swimming. Int.J Sports Med.13:367-371, 1992


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