水泳の練習メニュー:最大酸素摂取量を高めるトレーニング

持久力を高めるトレーニングとしては

どのようなものがあるでしょうか。

持久力の指標について

持久力を高めるトレーニングを考える前に

まず持久力の指標について復習します。

持久力の指標は

「最大酸素摂取量」 「乳酸閾値」 「OBLA」

などがあることを紹介しました。

 

さらに

「最大酸素摂取量」は呼吸循環能力が関係し,

「乳酸閾値」「OBLA」については活動している筋の

ミトコンドリア量などが影響することが考えられています1)

 

つまり,これらの持久力の指標を高めることが

持久力トレーニングの目標となります。

 

 

最大酸素摂取量を高めるトレーニング

復習ですが,酸素摂取量は以下の式で表されます。

 

酸素摂取量 = 心拍数×1回拍出量×動静脈酸素較差

 

全身持久力トレーニングを行うことで,

最大酸素摂取量は高まります。

最大酸素摂取量が増加する要因としては,

心拍出量の変化と動静脈酸素較差の変化が共に影響するとした報告や2)

心拍出量の変化よりも動静脈酸素較差の増加の方が大きいとする報告もあります3)

また,呼吸に関わる呼吸筋群の働きが高まることや,

肺胞の面積が増大するといった呼吸器系の変化も

最大酸素摂取量の向上に関わります4)

 

動静脈酸素較差を高めるトレーニング

1. 動静脈酸素較差が増加する要因

動静脈酸素較差の増加には,器官や組織での酸素利用が増すことが重要です。

特に筋における変化としては

 

1. ミトコンドリアの数の増加

2. ミトコンドリアの大きさの増加

3. 毛細血管密度の増加

4. 筋線維の組成の変化 (typeⅡbがtypeⅡaに変化する)

 

などが挙げられます5)

 

2. 動静脈酸素較差を高めるトレーニング

動静脈酸素較差を増加させるトレーニングとしては,

まず高強度のトレーニングが効果的なようです。

 

先行研究を一つご紹介します6)

この研究ではマウスを用いて運動強度と筋線維内のミトコンドリア数を検討しています。

運動は8週間,運動の頻度は毎日です。

1日当たりの運動量として,

最大酸素摂取量の40%の運動強度では,

運動を90分行っても筋線維中のミトコンドリアは増加せず,

最大酸素摂取量の50%では90分間の運動でわずかに増加,

最大酸素摂取量の85%の運動強度では30分で増加,

最大酸素摂取量の100%の運動強度では15分の運動で

大幅に筋線維中のミトコンドリア数が増加しました。

 

この研究から,

高強度の運動の方がミトコンドリア数の増加には効果的であることが考えられます。

従って,比較的高強度の運動の方が 動静脈酸素較差の増加にはよいのかもしれません。

 

※最大酸素摂取量の〜%は運動強度を示す指標です。  

最大酸素摂取量の50%はかなりゆったり,  

最大酸素摂取量の100%はほぼ全力…というイメージでいいと思います。

 

心拍出量を高めるトレーニング

1. 心拍出量が増加する要因

心拍出量は心拍数と1回拍出量の積で表されます。

心拍数はトレーニング効果が見込めません。

心拍数の上限が決まっています。

一般に (220-年齢) が心拍数の限界 (最大心拍数) と言われています。

 

一方,1回拍出量はトレーニングによって増加します。

左心室の増大や心筋収縮力が高まることが原因と考えられていて,

俗にスポーツ心臓と呼ばれます7)

 

2. 心拍出量を高めるトレーニング

心拍出量のうち,

トレーニングによって改善が見込めるのは一回拍出量になります。

一回拍出量が最も増加する運動強度は,

40%VO2max付近 (およそ心拍数にして110回/分付近)であり,

その後は一回拍出量が増加しないとした報告があります8,9)

その一方で,運動強度の増加に伴い,

一回拍出量は増加し続けるとした報告もあります10,11,12)

従って,はっきりとしたことはまだ分かりませんが,

心拍数110回/分付近の運動強度で運動することで,

一回拍出量を効率的に増加させる可能性があるかと思います。

 

その他の最大酸素摂取量を増加させるトレーニング

 

自転車で30秒間の全力ペダリングを2〜5分の休憩を挟んで3〜7回実施,

これを週に3回実施することによって,

最大酸素摂取量が増加することが報告されています13)

 

このようなトレーニングは

高強度インターバルトレーニングと呼ばれ,

筋への糖の取り込み能力が上がるなど,

持久力改善効果が徐々に明らかになってきています14)

 

水泳で考えると50mの全力泳速を2〜5分の休憩を挟んで

複数本実施するイメージになるかと思います。

短い時間,かつ高強度の運動で持久力を高めるこのトレーニングは,

これまでの持久力トレーニングの方法とは少し異なりますが,

注目の持久力トレーニングです。

いずれ,高強度インターバルトレーニングについてもレビューしてみたいと思います。

 

まとめ

酸素摂取量の増加には,

動静脈酸素較差の増加,

一回拍出量の増加が影響します。

 

動静脈酸素較差の増加には高強度な運動が

一回拍出量の増加には比較的低強度の運動が効果的である可能性が考えられます。

 

スイミングファーステストの分類でいえば

動静脈酸素較差の増加を狙うのはEN3

一回拍出量の増加を狙うのはEN1 

という分類になると思います。

 

しかし,持久力を高めるといっても

トレーニング方法が完全に確立されている訳ではないため

常に最新の情報をチェックしておきたいところです。

 

参考文献

1) 八田秀雄 著,乳酸と運動生理・生化学,2009

2) Rowell LB, Human cardiovascular adjustments to exercise and thermal stress. Physiol Rev. 54(1) : 75-159, 1974

3) Seals DR et al., Endurance training in older men and women. I. Cardiovascular responses to exercise. J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 57(4) : 1024-9, 1984

4) 山地啓司 著,スポーツ・運動生理学概説,2011

5) Jansson E, Kaijser L., Muscle adaptation to extreme endurance training in man. Acta Physiol Scand. 100(3) : 315-24, 1977

6) Dudley GA et al., Influence of exercise intensity and duration on biochemical adaptations in skeletal muscle. J Appl Physiol, 53 : 844-850, 1982

7) 浅野勝己 著,運動生理学概論,2004

8) Spina RJ et al., Differences in cardiovascular adaptations to endurance exercise training between older men and women. J Appl Physiol. Aug;75(2):849-55. 1993

9) Proctor DN et al., Influence of age and gender on cardiac output-VO2 relationships during submaximal cycle ergometry. J Appl Physiol. Feb;84(2):599-605. 1998

10) Krip B et al., Effect of alterations in blood volume on cardiac function during maximal exercise. Med Sci Sports Exerc. Nov;29(11):1469-76. 1997

11) Gledhill N et al., Endurance athletes’ stroke volume does not plateau: major advantage is diastolic function. Med Sci Sports Exerc. Sep;26(9):1116-21. 1994

12) Zhou B et al., Stroke volume does not plateau during graded exercise in elite male distance runners. Med Sci Sports Exerc. Nov;33(11):1849-54. 2001

13) Sloth M et al., Effects of sprint interval training on VO2max and aerobic exercise performance: A systematic review and meta-analysis. Scand J Med Sci Sports. 23(6) : 341-352, 2013

14) Terada S et al., Effects of high-intensity intermittent swimming on PGC-1alpha protein expression in rat skeletal muscle. Acta Physiol Dcand, 184 : 59-65, 2005 


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