水泳肩発症に関連する要因のまとめ~最新の文献から~

今回は水泳肩、スイマーズショルダーの発症に関わる要因を

最新の論文(2015年12月まで)をもとに改めて考えていきます。

水泳肩発症に関わる要因を理解することで

水泳肩の予防に直結します。

水泳肩発症の原因

以前、水泳肩については特集しました。

(参考:水泳肩(スイマーズショルダー)を予防する)

その中で水泳肩の原因として以下のようなものが考えられていました1.2.3)。

 

~水泳肩発症の原因~

1.肩関節のオーバーユース

2.肩甲上腕関節,肩甲胸郭関節の可動域不足

3.肩関節の外旋筋機能不全や過度な可動域による動的不安定性

4.不適切なフォーム

 (特に入水時の過度な肩関節内旋)

5.肩関節内旋筋と外旋筋の筋力のアンバランス

 (肩関節内旋の働きを持つ大胸筋,広背筋が強く

  肩関節外旋の働きを持つ棘下筋,小円筋などが弱い)

 

上記のような原因をもつ人が

水泳肩になりやすいとこれまで考えられていますが

最近の論文ではどのように言われているのでしょうか。

過去の論文を網羅した2015年のsystematic reviewを見てみます4)。

 

水泳肩に関するLee H. らのsystematic review

彼らは水泳肩と関連があると考えられている要因について過去の文献をまとめ

各要因にエビデンスレベルをつけています。

エビデンスレベルとは各要因が実際にどの程度、

水泳肩の発症と関連があるかを示したものです。

詳細は以下の通りです。

 

エビデンスレベル

高レベル

 十分な証拠 (エビデンス) がある。

 エビデンスを示した一連の研究はリスクをよく評価している。

 これらの研究から得た結論は、今後の新たな研究によっても大きな影響を受けない。

 

中等度レベル

 十分なエビデンスがある。

 しかし、サンプルサイズ、研究の質、研究の数が不十分である。

 さらなる研究によって、結論が変わる可能性がある。

 

低レベル

 十分にリスクを評価できていない。

 サンプルサイズや研究数の少なさから、エビデンスは不十分である。

 さらなる研究によって、結論は変わる可能性がある。

 

少々わかりにくい表現が並びましたが

要するに高レベルの要因ほど、

水泳肩の発症に関わる可能性が高いことを意味しています。

 

systematic reviewの結果

1.高レベル

 なし

 

2.中等度レベル

・関節の緩み、不安定性

・肩関節内外旋可動域の不足

・過去に肩の痛みがあった場合

・競技レベル

 

3.低レベル

・水泳の経験年数

・トレーニングの強度、量

・年齢

・パドル、ビート板の使用

・呼吸の向き

・肩関節内外旋筋力

・肩甲骨周囲の筋力

・肩甲骨の運動異常

・体幹の安定性

・肩関節の位置異常

・肩関節の柔軟性

・小胸筋、上腕三頭筋、広背筋の長さ

 

注目すべき点

中等度レベルのエビデンスとして

肩の可動性と安定性が入ってきました。

肩関節のストレッチと安定化トレーニングは必要であると解釈していいと思います。

特に肩関節のストレッチは内外旋方向へのストレッチが重要なようです。

 

低レベルのエビデンスに

肩関節内外旋筋力が入っています。

肩関節の安定性に関わる筋肉には

肩関節内外旋運動を起こす筋肉が含まれているため

肩関節の内外旋運動を高負荷で頑張ってしまいがちです。

しかし、肩関節内外旋筋力と水泳肩の関連は少ないことから

肩関節の内外旋の「筋力」を高めるよりも

肩関節の内外旋筋が肩関節の「安定性」に貢献できるような

トレーニングが重要になってくるのだと思います。

 

また、肩甲骨の運動や肩甲骨周囲の筋力はエビデンスレベルが低いです。

この結果だけみると、肩甲骨は水泳肩と関係ないように感じます。

しかし、私は全く関連がないと言い切れないと考えています。

肩甲骨の可動性が下がると肩甲上腕関節が肩甲骨の可動性の代償します。

肩甲骨周囲の筋力が十分にないと肩甲骨を固定できず、

肩甲上腕関節に過剰な負荷を強いる可能性があります。

 

いずれにしてもエビデンスレベルの低い要因であっても

軽視してはいけないものも含まれている印象でした。

 

おわりに

水泳肩と関連する要因について最新の論文からまとめました。

肩関節の可動域向上と安定化が特に重要であることが分かりました

フォームやトレーニング方法を追及するだけでなく

障害予防のためのトレーニングも忘れずに行いたいものです。

 

参考文献

1)Pollard H. et al., Shoulder pain in elite swimmers. ACO. 8 : 91-95. 1999

2)金岡恒治 他, 種目別スポーツ障害 水泳. 関節外科, 25 : 96-102, 2006

3)宗田大 編, 復帰をめざすスポーツ整形外科, 310-329, 2013(第3版)

4)Lee H. et al., Risk factors for shoulder pain and injury in swimmers : a critical systematic review.The physician and Sportsmedicine, early online 1-9, 2015


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