もっと練習をするために:練習頻度に影響する要素 -筋グリコーゲン-

故障や疲労は練習頻度を下げる原因の一つです。

今回は練習頻度に影響する要因のうち、

疲労に関連する筋グリコーゲンについて検討します。

筋グリコーゲンとは

筋グリコーゲンとは

筋肉に貯蔵されているグリコーゲンを指しています。

グリコーゲンは,体の中でも主に肝臓と筋肉で貯蔵されています。

 

主なグリコーゲンの貯蔵部位と貯蔵量は以下の通り1)

血中:3.6〜4.3g

肝臓:70〜90g

筋:400〜500g

 

特徴としては

肝臓のグリコーゲンは

血液を介して他の臓器のエネルギー源に利用されます。

 

筋のグリコーゲンは,

ほぼ筋肉のエネルギー源として利用されます。

また、激しい運動をした際は,

筋のグリコーゲンは乳酸となって血中に放出され,

他の臓器のエネルギー源として利用されます。

なお,60%VO2max以上の運動強度になると

筋グリコーゲンが積極的に利用されます2)

 

筋グリコーゲンと疲労

疲労の原因の一つに,筋グリコーゲンの枯渇が挙げられます。

筋グリコーゲン量が低下することで

単純に筋収縮に関わるエネルギー源が少なくなります。

また,筋グリコーゲンの低下によって

筋の収縮に関わるカルシウムの筋小胞体への取り込みが不十分となり

筋力低下や疲労につながっていくと考えられています3)

では, 筋グリコーゲンの回復にはどれくらいの時間を必要とするのでしょうか。

 

筋グリコーゲンの枯渇と回復

高強度の運動、特に60%VO2max以上の運動強度の運動を

長時間行うと筋グリコーゲンは枯渇していきます。

では、筋グリコーゲンが枯渇した状態から回復するためには

どれくらいの時間がかかるのでしょうか。

先行研究をみて検討してみたいと思います。

 

Piehlらの研究4)

〜方法〜

2時間の水泳,ランニングなどを行わせ,

外側広筋の筋グリコーゲンを枯渇させた。

その後,

1. 高炭水化物食を摂取した場合

2. 脂肪・タンパク質食を摂取した場合

3. 絶食した場合

の筋グリコーゲン量の回復を測定した。

 

〜結果〜

脂肪・タンパク質食では5日間経過しても筋グリコーゲンの回復量は少ない。

(運動前の半分程度)

絶食でも同様に筋グリコーゲンの回復量は少ない。

高炭水化物食では,

運動後10時間で急速な筋グリコーゲンの回復がみられ,

46時間でもとの筋グリコーゲン量まで回復した。

 

〜寸評〜

筋グリコーゲンの回復には

食事内容が重要であること、

食事を意識しても筋グリコーゲンの回復には2日程度かかるようです。

この研究だけで判断すると

高強度のトレーニングであるSP系やEN3の練習は

少なくとも2日以上あけて実施する必要があることになります。

 

筋グリコーゲンの回復速度をあげるための手段

筋グリコーゲンの回復には46時間程度かかるようですが

もっと速い回復は望めないのでしょうか。

 

筋グリコーゲンに関する総説をみてみますと

糖質とタンパク質 (特にホエイペプチド) を同時に摂取することで

筋グリコーゲンの回復速度は高まることが明らかとなっています5)

(糖質単独摂取と比較して,糖質+ホエイでは運動2時間後の筋グリコーゲンの回復量が約2倍になる)

 

従って, 筋グリコーゲンを消費する運動のあとには

糖質とタンパク質を一緒にとることが 一つのポイントになるのかもしれません。

この点については、さらに研究報告を待ちたい部分です。

 

グリコーゲンローディング

これまでは筋グリコーゲンを回復させる話でしたが

ここから視点を変えます。

筋グリコーゲンを増やす方法について考えます。

筋グリコーゲンを増やすことが出来れば

筋グリコーゲンが枯渇しにくくなり疲労も生じにくい…ということです。

 

筋グリコーゲン量を増やす代表的な方法として

グリコーゲンローディングがあります。

 

グリコーゲンローディングとは

グリコーゲンローディングとは,

運動で一時的に筋グリコーゲンを消費させ

その後,高炭水化物の食事をとることで筋グリコーゲンの量を高める方法です。

イメージをつかむため グリコーゲンローディングに関する最初の研究を紹介します6)

 

Bergstromらの研究6)

〜方法〜

被験者は疲労困憊まで片脚で自転車をこぎ

片方の脚の筋グリコーゲンを枯渇させる。

もう片方の脚は何もせず休ませる。

その後,高炭水化物の食事を3日間摂取。

 

〜結果〜

筋グリコーゲンが枯渇した脚の筋グリコーゲン量は

休ませておいた脚の筋グリコーゲン量の約2倍まで増加した。

 

~寸評~

この研究において、

筋グリコーゲンの貯蔵量を増加させるためには

一度筋グリコーゲンを枯渇させた方が効果的であることが示唆されました。

 

グリコーゲンローディングの具体的な方法

グリコーゲンローディングの方法は

これまでいくつか検討されています7)

 

方法1  

試合3日前から炭水化物の摂取量を増やす

 

方法2  

1.試合4日前に一度筋グリコーゲンを低下させる運動を行う  

2.その後,高炭水化物食を摂取する

 

方法3  

1. 試合7日前に筋グリコーゲンを低下させる激しい運動を行い  

2. その後3日間低炭水化物食をとり続け,筋グリコーゲン量を低く維持する。  

3. 試合3日前より高炭水化物食を摂取する。

 

最も筋グリコーゲン量が増加するのは方法3です。

しかし、個人的には方法3は体への負担も大きく

体調も崩しやすいのであまりお勧めできません。

また,グリコーゲンローディングに伴う極端な筋グリコーゲンの増加は

副作用もあるようです(腎臓への負担など)。

従って、

グリコーゲンローディングは

試合でいきなり行わずに

何度か試して体調が悪くならないか

チェックする必要はあるでしょう。

 

まとめ

グリコーゲンローディングは余談でしたが,

筋グリコーゲンの回復には糖質をとって46時間かかり

糖質+ホエイでさらに早まることが分かっています。

従って,持久系のメニューを組む際は

食生活も踏まえて

筋グリコーゲンの枯渇に陥らないように

週間メニューや月間メニューを構成する必要があるかと思います。

 

参考文献

1) 田中宏暁,グリコーゲンの貯蔵庫としての骨格筋,Practice 23, 138-139, 2006

2) Romijn JA. et al., Regulation of endogenous fat and carbohydrate metabolism in relation to exercise intensity and duration. Am J Physiol 265 : E380-391, 1993

3) 八田秀雄 著,乳酸と運動生理・生化学 -エネルギー代謝の仕組み-,2009

4) Piehl, K., Time Course for Refilling of Glycogen Store in Human Muscle Fibers Following Exercise-induced Glycogen Depletion. Acta. Physiol. Scand 90: 297-302, 1974.

5) 森藤雅史,運動後の筋グリコーゲンの回復に及ぼすアミノ酸,ペプチド,たんぱく質の影響,臨床スポーツ医学 29 : 887-892, 2012

6) Bergstrom, J., and Hultman, E.: Muscle Glycogen Synthesis after Exercise: Enhancing Factor Local-
ized to the Muscle Cells in Man. Nature (London),
210 : 309-310, 1966

7) 堀田昇,グリコーゲンローディング,体力科学 45 : 461-464, 1996


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