筋力の出力と脱力〜より速く泳ぐために〜

今回のテーマは筋力の出力と脱力です。

水泳に限らずスポーツの一流選手は

ガチガチに力を入れて動作を行うことはありません。

出力や脱力が水泳のパフォーマンスに

どのような影響を与えるのでしょうか。

一流選手は余計な筋肉を使わない

だいぶ古い研究ですが

オリンピック選手と大学水泳部選手で

泳いでいる最中の上半身の筋肉の活動を比較,検討した研究があります1)

 

実験の結果,

上腕三頭筋,大円筋,大胸筋,広背筋は推進力を生む筋肉であり,

これらの筋肉はオリンピック選手と大学水泳部選手で

共通して活動していることが分かりました。

 

さらに注目すべき結果として,

大学水泳部選手は大胸筋や僧帽筋といった筋肉が

推進力を生まない時期でも活動していることが分かりました。

 

つまり,

オリンピック選手と比較して大学水泳部選手は

余計に筋肉を使っている,

余計な力が入っているということになります。

 

動作の再現性は動作の上達と関係がある

練習を繰り返すことによって筋肉の神経支配が改善します。

神経支配が改善することによって動作の再現性が高まります。

 

動作の再現性とは

動作の再現性とは,

毎回同じ動作を行うことが出来ることを指します。

つまり,水泳において動作の再現性が高い人は

毎回同じフォームで泳いでいるということです。

しかし,毎回同じ動作を行う…というのは

思いの外大変です。

 

毎回同じ動作を行うためには

動作に関わる筋肉を

毎回同じ順序,同じ時間,同じ強さで使う必要があります。

 

だらだらと様々な筋肉が活動していては

動作の再現性を生むことは出来ません。

つまり,

動作の再現性を高めるためには脱力が必須となります。

 

脱力の難しさ

脱力とは,文字通り力を抜いた状態です。

しかし困ったことに

力を入れることより力を抜くことの方が難しいと考えられています2,3)

 

脱力をトレーニングできるのか

脱力する感覚を劇的に高めるトレーニングは

現在のところありません。

繰り返しの練習の中で体得するしかないようです3)

 

非常に疲労した状態で最もよい動きになる…

という話は聞いたことがあるかと思います。

これは余計な力が抜けている状態を指しています。

 

日々のトレーニングに応用する

動作の再現性を高めるためには

「脱力」という要素が大切であることが分かりました。

脱力は日々のトレーニングで培うものであることも分かりました。

 

この事実より

日々のトレーニングで意識するべきポイントが浮かび上がります。

すなわち

「いかに力を抜くか」

「どこで力を抜くか」

の追求です。

 

漫然と泳ぐのではなく

力を入れるタイミングと抜くタイミングを意識してトレーニングを行うことが

水泳のパフォーマンス改善に必須であると思います。

脱力を意識することで,日々のトレーニングに新しい意義を添えることができます。

 

おわりに

水泳の泳速を高めるためには

「ストロークレート」

「ストローク長」

を考える必要がありました。

(参考文献:ストローク長とストロークレート:泳速に関わる要素

今回の記事は

ストロークレートにもストローク長にも影響する内容です。

 

さらに,

余計な力が入っていない動作は

筋肉の酸素消費も少なく

持久力の改善にも効果があります。

 

また,どのタイミングで力を抜くか

それは,それぞれの体型やフォームによってかわってきます。

 

「脱力」

日々の練習で改めて意識したいポイントです。

参考になれば幸いです。

 

参考文献

1)猪飼道夫ら, 水泳中の筋電図. 体育学研究 7 (1), 153, 1963

2)Matthew,B. S., Daniel, M. C., and David, E .V, Cortical and subcortical mechanisms for precisely controlled force generation and force relaxation. cerebral Cortex 19: 2640-50. (2009)

3)木塚朝博.トップアスリートでも難しいカの抜き方, Training Journal 362 :24-30. (2009)


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