グラブスタートとクラウチングスタートはどちらが優れているのか

水泳のスタートには

グラブスタートとクラウチングスタートがあります。

どちらのスタートの方が優れているのでしょうか。

グラブスタートとは

グラブスタートは構えの姿勢でスタート台の先端に両足をかけ,

両手でスタート台を押して飛び出すスタート方法です。

1960年代より行われ始めたスタート方法で

現在も使われている一般的なスタート方法です。

 

クラウチングスタート(トラックスタート)とは

クラウチングスタートはグラブスタートの後に登場しました。

日本ではクラウチングスタート,

海外ではトラックスタートと呼ばれることが多いです。

グラブスタートとの最大の違いは

構えの姿勢でスタート台の先端にかける足は片脚である点です。

近年はこのクラウチングスタートが主流になりつつあります。

 

グラブスタートとクラウチングスタート,どっちが優れている?

2008年より前と2008年より後で分けて検討します。

なぜ2008年までで区切るのか,

それは2008年にスタート台の変更があったからです。

2008年より羽付きのスタート台 (Omega OSB11) が競泳界に導入されました。

それによって,スタート方法も変わってきています。

 

2008年より前のスタートを比較する

結論から言うと2008年以前のスタート台において

グラブスタートとクラウチングスタートで

タイムの明確な違いはないようです。

 

スイミングファーステストでは

二つのスタートで優劣は決していないと述べています。

グラブスタートではスタート台からの足離れが遅いですが

入水後のグライドでは減速しにくい特徴があります。

一方,クラウチングスタートでは

スタート台からの足離れは速いですが

入水後のグライドで減速しやすいようです。

 

また,スイミングファーステスト刊行後の研究でも

一致した結論は得られていません1,2,3)

 

しかし,一流選手はクラウチングスタートを選択することが多いようです。

その理由として,クラウチングスタートの方が構えの姿勢が安定するため

スタートの失敗が少ないことが考えられています1)

 

2008年以降のスタートを比較する

2008年以降のスタート台ではクラウチングスタートの一種である

キックスタートが登場します。

キックスタートは,クラウチングスタートと同じような構え姿勢ですが

スタート台の羽に足を乗せ,羽を蹴り出してスタートするスタート方法です。

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(上図は文献4より抜粋)

さて,このキックスタートですが

従来のクラウチングスタートよりも速いのでしょうか。

 

実はこれも結論が出ていません。

キックスタートの方が速いとする報告と4,5)

クラウチングスタートと変わらないとする報告があります6,7)

まだまだ研究数が少ないのが現状です。

 

まとめ

グラブスタートとクラウチングスタート,そしてキックスタート

この中でどのスタートが最も優れているか

それは分からないという結論に達しました。

 

しかし,個人的な感覚では

キックスタートが最も優れているように感じます。

理由として,

キックスタートはクラウチングスタートと同じ,構えの姿勢の安定性を持ち

かつ,羽にかけた足で地面を蹴り出すことが出来るためです。

 

さらなる疑問:キックスタートの重心は前か後ろか

キックスタートは今後のトレンドになっていく可能性があります

そこで,このキックスタートについて新たな疑問が浮かびました。

その疑問とは構えの姿勢における重心の位置です。

構えの姿勢で重心をスタート台の先端に寄せるのか

もしくは後ろの羽側に寄せるのか

どちらがいいのでしょうか。

 

結論

どうやら中間から後方(羽側)にかけての重心が

最もタイムが速くなるようです8)

しかし,参考となる論文が一つしかないため

今後結論が変わってくる可能性はあります。

 

おわりに

今回は水泳のスタートの違いとタイムについてまとめました。

どのスタート方法が最もタイムが速くなるのか,

その結論は今のところ得られていないことが分かりました。

 

各個人の体重や筋力などの違いによって

自分にとって最適なスタート方法が異なる可能性があるため

何度も練習をして自分にあったスタート方法を見つけなければなりません。

つまり,スタートについてもデータの集積が必要になります。

 

参考文献

1)Breed R. et al., A biomechanical comparison of the grab, swing and track starts in swimming. Journal of Human Movement Studies, 39, 277–293. 2000

2)Blanksby B.et al., Biomechanical analysis of the grab, track and handle swimming starts: An intervention study. Sports Biomechanics, 1, 11–24. 2002

3)Welcher R. et al., Front- or rear-weighted track start or grab start: Which is the best for female swimmers? Sports Biomechanics, 7, 100–113. 2008

4)Ozeki, K. et al., Kicking the back plate of the starting block improves start phase performance in competitive swimming. Proceedings of the 30th conference of the international society of biomechanics in sports (4, pp. 373–376), 2002

5)Biel, K. et al., Kinematic analysis of take-off performance in elite swimmers: New OSB11 versus traditional starting block.  XIth international symposium for biomechanics and medicine in swimming – Book of abstracts (pp. 91). 2010

6)Vint, P. F. et al., Effects of handle and block configuration on swim start performance. In Paper presented at the XXVII international society of biomechanics in sports conference, 2009

7)Takeda, T. et al., Effect of inclination and position of new swimming starting block’s back plate on track-start performance. Sports Biomechanics, 11, 370–381. 2012

8)Heidi H. et al., The effect of different kick start positions on OMEGA OSB11 blocks on free swimming time to 15 m in developmental level swimmers. Human Movement Science 34, 178–186, 2014


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