肉体の限界を越える者たち〜レジェンドと呼ばれる選手の強さ〜

水泳における記録のピークとは何歳くらいなのでしょうか。

それを知ることでレジェンドと言われる一流選手達が

いかにすごいかがみえてきます。

そして,ベテラン選手から学びとる謙虚な姿勢が

速くなる近道であることが実感できます。

筋力のピーク

筋力のピークは20〜30歳台といわれています1)

それ以降は筋力は低下します。

特に45歳を過ぎると筋肉の量が急速に減少することが明らかとなっています2)

 

さらに筋力発揮に関わる筋肉のうち

素早い動きに関わる筋肉,

速筋線維の萎縮が加齢に伴って起こります3)

これは,高齢者が何かにつまづいたときに

とっさに足が出てこないことからも実感できます。

 

筋力のピーク以降に競技力は低下するか

速筋線維は萎縮は非常に問題です。

スプリント力が低下します。

 

持久力については

筋力以外にも循環系の変化などが関わってくるため

何歳から一気に低下する…という論文はありませんでした。

しかし,加齢に伴い低下するのは間違いありません。

 

水泳という競技だけでみてみると

速筋線維が萎縮し始める30歳代以降は

全ての種目において競技力が低下し始めると思われます。

 

知能,メンタルのピーク

知能にもピークがあります。

知能は

「流動性知能」と「結晶性知能」の二つに分類されます。

 

流動性知能のピーク

流動性知能とは

情報処理や問題解決,空間認知などを行う知能です。

いわゆる頭の回転の速さに関係する知能です。

この流動性知能のピークは

50歳代とする説4)

20歳代とする説があります5)

 

結晶性知能のピーク

結晶性知能とは

過去の経験や学習によって蓄積された知識であり

一般常識や作業の習熟などが含まれます。

この結晶性知能のピークは

40歳代後半であり

70歳を越えても保持されます6)

競技に関わる知能

「流動性知能」「結晶性知能」

いずれも競技に関わる知能ですが

特に結晶性知能は水泳には重要な知能です。

 

結晶性知能は経験であり,

この経験とは

コンディショニングの方法,

メンタルコントロール,

レース前の調整方法,

レースプランの立てかた

…と様々なものがあります。

 

この結晶性知能が加齢によってもほぼ低下しないということは

ベテランは

積み重ねた経験を失うことなく

逆にどんどんと経験を蓄積していることに他なりません。

 

レジェンドと呼ばれる選手はなぜ結果を残せるのか

当たり前かもしれませんが

先述のような経験の積み重ねが

レジェンドと呼ばれるベテラン選手の競技力を高めている

大きな要因だと思います。

 

この経験は結晶性知識であり失われることもありません。

加齢によって身体能力は低下しても

それを補ってあまりある豊富な経験が

高いレベルでの競技力を保つ秘訣となっていると思います。

 

北島選手のインタビューの中にも

「自分の体のことを知っている」

というコメントがありました。

自分の体の状態を敏感に察知し,

自己管理を行う能力は

経験によって培われるものだと思います。

 

ベテランと若手の融合

これも基本的なことですが

ベテランの経験を若手に伝えることで

ものすごい化学反応が起こります。

 

肉体のピークを迎える若手に

ベテランの蓄積した知識と経験が上乗せされる…

想像するだけで楽しいです。

 

優秀なベテランやコーチがいるクラブチームが

若手も強いのは当然のことなのです。

 

おわりに

今回はベテラン,レジェンドと呼ばれる人達の強さについて考えてみました。

彼らの強さの秘密は「蓄積した知識と経験」でした。

 

そして,非常に大きな視点でみてみると

先人達の知識の積み重ねが

現在の水泳のタイムに反映されていると思います。

 

 

それは,

フォームの進歩であり

トレーニング方法の進歩であり

水着の進歩です。

 

昔は100m Frで1分は切れない,といわれていた時代がありました。

今は50秒を余裕で切る時代です。

蓄積した知識の力。

私はベテランや先人達から学びとる姿勢が

速くなる近道だと思います。

知識にどん欲になりたいものです。

 

参考文献

1)Doherty TJ., Invited Review: Aging and sarcopenia. J Appl Physiol.  95(4):1717-27. 2003

2) Janssen I et al.,  Skeletal muscle mass and distribution in 468 men and women aged 18-88 yr. J Appl Physiol 89:81-88, 2000.

3)Lexell J. et al., What is the cause of the ageing atrophy? Total number, size and proportion of different fiber types studied in whole vastus lateralis muscle from 15- to 83-year-old men. J Neurol Sci. 84(2-3):275-94, 1988.

4)Schaie KW:Developmental influences on adult intelligence;The Seattle Longitudinal Study. Oxford University Press, New York(2005).

5)Salthouse TA:What and when of cognitive aging? Current L)irections In Psychotogiαal Science,13 :140- 144(2004).

6) Kaufman AS, Horn JL:Age changes on tests of fluid and crystallized ability for woman and men on the Kaufman Adolescent and Adult Intelligence Test (KAIT) at ages 17-94 years. Arch Clin IVeuroPsychol 11 : 97-121, 1996


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