パドルの意義〜水泳でパドルは必要か〜

パドルを使う人は多いと思いますが

そもそも何を目的としてパドルを使うのでしょうか。

スイミングファーステストの見解と

現在のパドルトレーニングに対する見解の一部を紹介します。

パドルの意義:スイミングファーステストの見解

スイミングファーステストの記載をそのまま引用します。

 

「パドルを使うと,手のひらが捕らえる水の量は増える。

 このためストロークレートを落としてもスピードは上がる。

 本当にスピードが向上するのは,

 ストローク長を落とさずにストロークレートを上げた場合や

 ストロークレートを落とさずにストローク長を伸ばした場合だ。

 パドルを使った場合,ストローク長は本来よりも大きく伸びる。

 同時に,ストロークレートが大幅に低下していることが多い。

 このようにして速く泳いだところで,

 実際の水泳のスピード向上には役に立たない。

 したがって,パドルを利用したトレーニングは推奨できない。」

 

さらにスイミングファーステストでは,

パドルを使うことによって

肩の関節や靱帯の炎症を起こしやすいこと,

筋力トレーニングとしても用いるとしても

強度が低すぎることを指摘しています。

 

以上より,スイミングファーステストでは

パドルの使用を推奨していません。

 

では,なぜ今でもパドルは使用されているのでしょうか。

 

パドルの意義:現在考えられる可能性

スイミングファーステストが発刊されてから10年以上もたつのに

現在も各メーカーからパドルは販売されています。

 

現在のパドルは,

スイミングファーステストが指摘した問題点を越える

何かしらのメリットを我々に与えるのでしょうか。

 

1.筋力を高める

 

パドルを用いることで水を押す量が増えるため

パドルがない時と比較して確実に腕にかかる負荷量は増えます。

しかし,スイミングファーステストでは

パドルを用いて筋力トレーニングを行うにしても

強度が低すぎる,と述べています。

本当でしょうか?

 

答えは

パドルを用いたトレーニングの負荷量は低いとは言い切れない,

というところでしょう。

 

パドルを用いることで筋力トレーニングの効果はある程度得られると思います。

スイミングファーステストが発刊されたあとの研究で

比較的低負荷であっても繰り返し運動を行うことで

筋肥大や筋力アップが望めることが明らかとなりました。

(参考:筋力トレーニングの新たな方法と水泳への応用

 

従って,

従来から言われていた筋肥大が望める最大筋力の60%以上の負荷量は

パドルでは作り出せないものの

通常のスイムより高い負荷となるパドルで

筋肥大や筋力アップは期待できる可能性があります。

 

2.ストローク戦略への影響

前回紹介したストローク戦略を体に覚え込ませるトレーニングとしても

パドルは有効です。

(参考:左右のストロークのタイミングを考える

 

実際にパドルをつけてみて泳ぐと分かりますが

「catch up」のスイムが非常にやりづらいです。

反対にストローク長がぐっと伸びるので

ストロークの時間が長くなります。

つまり,パドルをつけることで

「catch up」から「opposition」「superposition」に

ストローク戦略が移行されます。

 

従って,パドルをつけ泳ぐことで

ストローク長が長い泳ぎを実感出来るとともに

「opposition」や「superposition」の感覚を身につけることができます。

 

注意点としては

女性スイマーについてはパドルをつけても

「opposition」や「superposition」に移行することはないという

研究結果があります1)

女性の方はストローク戦略を変えずに

ストローク長を伸ばす目的でパドルを取り入れた方がよさそうです。

 

3.水をつかむ感覚を養う??

水をつかむ感覚がパドルを使うと養える…

パドルの意義を説明したサイトでよくみる表現ですが

私は正確な表現とは思いません。

 

「水をつかむ感覚」は生身の体でしか養えないと思います。

むしろ,

「腕が推進力を生む方向に対して垂直になっているか確認する」

という表現の方が正確だと考えます。

 

水を押すと,押した分だけ力が返ってきます。

(作用・反作用の法則)

なので,推進力を生む方向に対しては

腕が垂直になっている方が

より多くの水を後ろに押すことができます。

この確認のためにパドルを用いる…という説明なら理解出来ます。

 

パドルとケガ

パドルを用いることで

通常のスイム以上の負荷が肩関節や肘関節にかかります。

水泳をほとんどやったことがない人が

いきなり泳ぐと肩を壊すのと同じように

いきなり肩関節や肘関節の負荷量を上げると故障のリスクがあります。

 

パドルを使う時は

最初は使用時間を限定するなどして

段階的に各関節への負荷量をあげていくべきです。

 

素朴な疑問:パドルの大きさは何を基準に選択する?

素朴な疑問ですが

パドルの大きさは何を基準に選択すればよいのでしょうか。

 

過去の研究で

小さいパドル(271.27cm2)と

大きいパドル(332.67cm2)を使って,

100m泳を行い泳速などを計測したものがあります。

その結果,

ストローク長は大きいパドルが小さいパドルよりも高まるものの

ストロークレートや泳速は変化しませんでした2)

 

つまり,

ストローク長を高める必要がある人は

特に大きなパドルを使った方がいいかもしれません。

 

ただし,大きなパドルは肩にかかる負荷量も多くなるため

はじめは小さいパドルでもいいと思います。

 

おわりに

今回はパドルを用いる意義について考えてみました。

パドルを用いることに否定的な意見も多いです。

しかし,パドルをうまく利用すれば

通常のトレーニングでは得られないトレーニング効果が得られると考えます。

 

トレーニングツールの一つとして

パドルはうまく使っていきたいものです。

 

参考資料

Strokemakers ストロークメーカーNEO 1サイズ 2013150

水泳 パドル スイミング ストローク 改善 推進力UP トレーニング

参考文献

1.Gourgoulis V et al., The influence of hand paddles on the arm coordination in female front crawl swimmers. J Strength Cond Res. 23(3):735-40, 2009

2. Daniel LP et al.,The Influence of Different Hand Paddle Size on 100-m Front Crawl Kinematics. Journal of Human Kinetics volume (34):112-118, 2012


SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA