水泳肩を予防する①:肩関節の安定性とは

水泳肩の原因として肩の不安定性が挙げられます。

不安定性を防げば,水泳肩発症のリスクを

一つつぶせることになりますが

そもそも肩関節の安定性とはどのようなものでしょうか。

肩関節の安定性とは

肩関節を勉強する上でのバイブル

信原先生の「肩」では肩関節の安定性について以下の様に記載されています1)

「肩は手指が物をつかむという目的のため広範な運動性・運動域が要求され,

それに応じた機能や応形変化のために

関節の基盤である安定性が犠牲にされているともいえる。

逆に肩のゆるさは運動性のためにあるのだとさえ考えられている。」

 

つまり,ある程度の肩のゆるさ(不安定性)は

肩関節に求められる機能を果たすためには必要だということです。

筋肉でがちがちに固めたりすることは

肩関節本来の機能を損ないます。

 

肩関節の安定性に関わる機構

肩関節,特に肩甲骨と上腕骨から構成される関節は

肩甲上腕関節と呼ばれます。

肩甲上腕関節の安定性を保つための機構として

「静的安定化機構」と「動的安定化機構」があります2)

 

「静的安定化機構」は何もしないときに肩関節の安定性に関わる機構

「動的安定化機構」は肩関節を動かしている時の安定性に関わる機構

となり,水泳にはいずれの機構も関係します。

それぞれの機構に関わる因子は以下の通りです。

 

静的安定化機構に関わる因子

関節包上部の張力

上関節上腕靱帯の張力

滑液の粘着力や付着力

関節の陰圧

関節唇による関節窩の適合性

 

動的安定化機構に関わる因子

回旋筋腱板

三角筋

上腕二頭筋長頭

 

簡単にまとめると

静的安定性は骨構造,靱帯,関節唇の構造的関係と

関節の粘着力や付着力によって生まれています。

一方,動的安定性は

回旋筋腱板などの筋肉の活動と

静的安定性機構に関わる因子が組み合わせることで達成されます。

これを踏まえてもう一度,

水泳肩の原因となる因子を

以前紹介したsystematic reviewの結果からみていきます。

(参考:水泳肩発症に関連する要因のまとめ〜最新の文献から〜

 

水泳肩発症に関連する要因のエビデンス3)

1.高レベル

 なし

 

2.中等度レベル

・関節の緩み、不安定性

・肩関節内外旋可動域の不足

・過去に肩の痛みがあった場合

・競技レベル

 

3.低レベル

・水泳の経験年数

・トレーニングの強度、量

・年齢

・パドル、ビート板の使用

・呼吸の向き

・肩関節内外旋筋力

・肩甲骨周囲の筋力

・肩甲骨の運動異常

・体幹の安定性

・肩関節の位置異常

・肩関節の柔軟性

・小胸筋、上腕三頭筋、広背筋の長さ

 

静的安定性,動的安定性という観点から改めてみてみると

中等度レベルのエビデンスに含まれる

「関節の緩み、不安定性」は肩関節を安定させることで改善し

「肩関節内外旋可動域の不足」は肩関節に柔軟性を持たせる

つまり,不安定にさせることで達成されます。

これは重要な事実です。

水泳選手は

肩関節の「安定化」と「不安定化」という一見すると相反する目標を

同時に達成しなければならないことになります。

 

この目標を達成するために

肩関節周囲のストレッチやトレーニングが必要となります。

具体的な内容は以下の通りです

(参考:水泳肩(スイマーズショルダー)を予防する

 

〜水泳肩の予防トレーニングの内容〜

1.肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節の柔軟性の向上(ストレッチ)

2.肩関節内外旋筋の不均衡是正のための筋力トレーニング

 (主に肩関節外旋筋群が中心)

3.フォームの修正

4.練習後の肩関節のアイシング

 

さて,次回は特に上記の項目2について考えていきます。

すなわち,動的安定性に関わる重要な要素,筋力です。

水泳肩を予防する筋力トレーニングとはどのようなものでしょうか。

正しい方法や注意点はないのでしょうか。

 

分量が増えそうなので,次回から紹介していきます。。

 

参考文献

1)信原克哉 著,肩ーその機能と臨床(第4版),229,2012

2)Carolyn Kisner 著,運動療法大全,481-557,2012

3)Lee H. et al., Risk factors for shoulder pain and injury in swimmers : a critical systematic review.The physician and Sportsmedicine, early online 1-9, 2015


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