水泳肩(スイマーズショルダー)を予防する

今回は水泳選手で多い故障である

水泳肩,スイマーズショルダーの予防と原因について考えていきます。

水泳肩とは

水泳選手の肩関節痛を総称して

水泳肩,スイマーズショルダーと呼びます。

初期症状としては、トレーニング後の肩の違和感です。

特に入水時、リカバリー時に疼痛が出現することが多いです。

 

水泳肩の病態として

1.棘上筋腱,上腕二頭筋長頭腱と肩峰・烏口肩峰靱帯とのインピンジメント

2.棘下筋腱の肩峰下でのインピンジメント

3.肩甲上腕関節の不安定症

4.上方肩関節唇損傷 (SLAP損傷)

5.上腕二頭筋長頭炎

などが含まれています1)

 

水泳選手の43%はなんらかの肩の故障経験があるため

水泳肩は決して他人事ではない故障です2)

 

水泳肩の原因

水泳肩の原因には以下が考えられています3,4,5)

1.肩関節のオーバーユース

2.肩甲上腕関節,肩甲胸郭関節の可動域不足

3.肩関節の外旋筋機能不全や過度な可動域による動的不安定性

4.不適切なフォーム

 (特に入水時の過度な肩関節内旋)

5.肩関節内旋筋と外旋筋の筋力のアンバランス

 (肩関節内旋の働きを持つ大胸筋,広背筋が強く

  肩関節外旋の働きを持つ棘下筋,小円筋などが弱い)

 

簡単にまとめると

肩関節が動きすぎても動かなすぎてもダメ、

筋力のアンバランスがあってもダメ、

ということになります。

そこに不適切なフォームや過度なトレーニングが加わることで

水泳肩が発症すると理解していいと思います。

 

水泳肩の予防

上記の原因をつぶしていくことが直接的な予防になります。

すなわち、

1.肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節の柔軟性の向上(ストレッチ)

2.肩関節内外旋筋の不均衡是正のための筋力トレーニング

 (主に肩関節外旋筋群が中心)

3.フォームの修正

4.練習後の肩関節のアイシング

です。

具体的に見ていきます。

 

肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節の柔軟性の向上(ストレッチ)

ストレッチの対象となる筋は以下の通りです。

1.肩甲骨から上腕骨に付着する筋

 棘上筋、棘下筋、小円筋、大円筋、肩甲下筋、

 大円筋、三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋など

2.体幹と肩甲骨の間の筋

 広背筋、大胸筋、菱形筋など

 

各筋のストレッチ方法については

専門書を見た方が確実です。

ここでは水泳肩の予防には肩回りのストレッチが有効である、

と理解して頂ければ十分です。

なお、有名な肩甲胸郭関節のストレッチとして

wing ストレッチやfull-arcストレッチがあります。

 

肩関節内外旋筋の不均衡是正のための筋力トレーニング

特に肩関節外旋筋群のトレーニングを行うことになります。

チューブやセラバンドを用いた

肩関節外転運動や外旋運動が有名です。

 

フォームの修正

過度な肩関節の伸展、内旋がないかチェックします。

具体的な対策としては

1.ローリングを大きくする

2.呼吸側を変更する

などです。

 

まとめ

水泳肩の予防には

肩関節周囲のストレッチ、筋力強化、フォーム修正が重要です。

以前の投稿で議論した水泳選手に筋力トレーニングは有効か、

という疑問に対する答えの一つがここにあります。

すなわち、

競技力の向上ではなく障害予防の目的も

筋力トレーニングは有効であるということです。

 

水泳選手のトレーニングはプールの中のみにあらず。

陸上でも行えるトレーニングはたくさんありそうですね。

 

参考文献

1)Kennedy JC. et al., Orthopedic manifestations of swimming. Am J Sports Med. 6:309-322, 1978

2)小松泰喜 他,一流競泳選手の肩痛の発生原因と予防, 肩関節. 26 : 333-336, 2002

3)Pollard H. et al., Shoulder pain in elite swimmers. ACO. 8 : 91-95. 1999

4)金岡恒治 他, 種目別スポーツ障害 水泳. 関節外科, 25 : 96-102, 2006

5)宗田大 編, 復帰をめざすスポーツ整形外科, 310-329, 2013(第3版)

 


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