一流選手からペース配分を学ぶ②〜7年間の世界選手権の結果より〜

今回紹介する論文は

過去7年間 (2001〜2008年) の9つの世界大会の

準決勝,決勝のレースを分析した論文です1)

世界大会の中には2つのオリンピックも含まれています。

分析対象となる種目はFr,Ba,Br,Fly,IMの全てです。

今回の論文の分析対象となる人数は非常に多く

男性1530人,女性1527人となっています。

世界選手権クラスのレースで

レースプランに何か傾向は見いだせるのでしょうか。

 

データ集積の結果

Eileenらの分析の結果の表を記載します。

(下表は参考文献1より抜粋)

lap.001

かなり見応えのある表だと思います。

どれくらいタイムが落ちているのか,

どれくらいのタイムで入っているかなど

参考になる部分は非常に多いです。

 

結果の分析

ラップタイムと合計タイムの相関

得られた結果から筆者らはさらに分析を行っています。

分析内容は前回の投稿でも紹介した

ラップタイムと合計タイムの相関です。

 

その結果,

100m競技では50〜100mのタイムが速いほど

合計タイムが速いことを報告しています。

200m競技では50〜100m,100〜150mのタイムが速いほど

合計タイムが速い結果となっています。

なお,400m競技については分析を行っていません。

 

これらの結論は

前回の投稿で紹介した論文と同じ結論です。

まとめると,

100m競技では後半50mのタイムをいかに落とさないか

200m競技では中間の100mをいかに踏ん張るか

以上が鍵となるでしょう。

 

200m,400m競技のラップタイムについて

筆者らは200m競技と400m競技の

中間のラップタイムについても注目しています。

200m競技であれば

50〜100mと100〜150mのラップタイム

400m競技であれば

100〜200mと200〜300mのラップタイムになります。

 

表の結果をみてみると

200m,400mのいずれの競技でも

中間のラップタイムはほぼイーブンです。

疲労が溜まってくる中間部分でも

泳速を落とさないことは一つのポイントになるでしょう。

 

分析結果をトレーニングに還元する

今回の論文から得られた知見をまとめます。

また,得られた知見に対して

私なりに有効なトレーニングプランを考えてみました。

 

100m競技について

100m競技は後半の50mで

いかにタイムを落とさないかがポイントでした。

 

1oom競技は非常に運動強度が高く

筋肉も強い力で収縮する必要があります。

従って,個人的には全身の疲労よりも局所,特に筋肉の疲労の方が

後半50mのタイム低下に影響していると考えています。

言い換えると

後半のタイムの低下には

酸素の取り込みや二酸化炭素の排出が追いつかないことよりも

筋肉への疲労物質の蓄積の方が影響しているのではないか,ということです。

 

これを改善するには

非常に高強度な運動で繰り返し泳ぐ

SP1 (耐乳酸トレーニング) などが効果的ではないでしょうか。

 

200m,400m競技について

中間のラップをいかに落とさないかが重要でした。

中間のラップを落とさないための戦略として

前半を抑えて入ること,

持久力そのものを高めることが求められます。

 

200mや400m競技では最初からフルパワーで泳ぐことはありえません。

まずは,最初のラップでオーバーペースにならないよう注意します。

さらに,中間では疲労しながらでもタイムを落とさないように

疲労した状態でのレースペース練習が必要でしょう。

 

まとめると以下の通りです。

 

1.序盤のレースペース

目的:オーバーペースにならないようタイム感覚を養う

 

2.中盤,終盤のレースペース

目的:疲労した状態でもタイムを落とさないようにする

対策:ストロークレートを高める,キックをより意識する,など

 

また,競技時間から考えて

有酸素系の持久力を高めることで

中間ラップの低下を抑えることが出来ると考えられます。

EN2やEN3といったトレーニングが必要だと思います。

 

おわりに

世界選手権のラップタイムをみることで

日頃のトレーニングで何を意識してトレーニングしなければならないか,

またどんな知識が必要か,

かなり明確に浮かび上がってきたと思います。

私も自分が考えるトレーニング方法について

改めて考え直す機会になりました。

 

皆様の参考になれば幸いです。

 

参考文献

1)Eileen R. et al., Analysis of lap times in international swimming competitions. Journal of Sports Sciences, 2009; 1–9


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