水泳のシーズンプランを立てる (マクロサイクルとメゾサイクル)

シーズンプランを立てていますか?

記録を出したい大会を設定し,

そこに向けて計画的にトレーニングを行うことは

もはや必須の戦略です。

シーズンプランの立て方について

スイミングファーステストを参考にみていきます。

シーズンプランを立てるにあたって

トレーニングサイクルの概念を知る必要があります。

トレーニングサイクルは期間の長さから

 

「マクロサイクル:4〜12週」

「メゾサイクル:2〜8週」

「ミクロサイクル:週間計画」

 

の3つに分けられます。

ミクロサイクルを設定するに当たって必要な知識

マクロサイクル,メゾサイクルについてみていきます。

 

マクロサイクル

最も大きなサイクルです。

1つのサイクルの単位は4〜12週であり,

以下のようなシーズン構造をとることが多いです。

 

マクロサイクルを用いたシーズン構造

典型的なシーズン構造は以下の通りです。

 マクロサイクル1:共通準備期間 (4〜12週間)

 マクロサイクル2:個別準備期間 (4〜8週間)

 マクロサイクル3:レース準備期間 (4〜6週間)

 マクロサイクル4:テーパー期 (2〜4週間)

 マクロサイクル5:休養期間 (1〜2週間)

 

マクロサイクルの各シーズンの詳細

マクロサイクル1:共通準備期間

目的

・シーズン中盤のハードなトレーニングに耐えうる体を作ること

 

トレーニングの詳細な目的(短距離選手,長距離選手共通)

・持久力の向上(特に循環器系,呼吸器系)

・スプリント能力の保持,向上

・全身の筋力増強

・柔軟性の向上

・ストローク技術の向上

・スタート,ターン技術の向上

・苦手な種目の克服(個人メドレー選手)

 

具体的なトレーニング内容(短距離,長距離選手共通)

・EN1を中心とした練習メニュー

・EN3,SP1などの高強度トレーニングの頻度は週に1〜2回程度

・トレーニング量は段階的に増加させる

・筋力トレーニングは全身くまなく実施する

 (長距離選手の場合は実施しなくてもよい)

 

解説

この時期では長いシーズンの文字通り準備期間です。

今後の練習で故障しないために柔軟性を高めたり

繰り返しの練習に耐えるための基礎的な持久力をつける期間になります。

 

マクロサイクル2:個別準備期間

目的

・基礎持久力,筋持久力,筋力,スプリント能力の重点的な強化

・レースで使用する筋を鍛える期間なので,

 できる限り専門種目でトレーニングを実施する

 

トレーニングの詳細な内容

長距離選手の練習メニュー

・EN2,EN3のトレーニング量を増加させる

・SP1は不要 (EN3で代用するため)

・SP2の実施頻度は短距離選手には劣る頻度で実施する

・筋力トレーニングでは筋力の維持に努める

 

短距離選手の練習メニュー

・EN2,EN3のトレーニングは避けEN1の量を増加させる

・SP1の実施頻度は週1回程度

・SP2の実施頻度も増やす(頻度は記載がなかった)

・筋力トレーニングは負荷量を高め,各部位の筋力強化を目標とする

 

長距離・短距離選手共通の練習メニュー

・リカバリートレーニングを多くする

 (強度の高い練習のあとに組み込む)

 

その他のトレーニング

・レースペース時のストローク長を伸ばす

・ストローク長とストロークレートの最適な組み合わせを模索する

・柔軟性を高めるトレーニングは引き続き行う

 

解説

専門種目や専門距離によって

大きくトレーニング内容が変わっていく時期です。

ここで練習メニューも短距離と長距離に

分かれていくことになるかと思います。

 

マクロサイクル3:レース準備期間

目的

・有酸素性,無酸素性の筋持久力の向上

(全ての期間の中で最もトレーニング強度が高まる時期)

・レースペースの平均泳速の向上

 

トレーニングの詳細な内容

長距離選手の練習メニュー

・レースペースを重点的に実施(長距離で)

・EN3やSP1は実施しない

・EN1,2の量は減らしていく

・SP2は距離,実施頻度を減らして実施

・筋力トレーニングは筋力維持を目的とした強度にする

 

短距離選手の練習メニュー

・レースペースを重点的に実施

・EN1は継続して実施

・SP2は距離,実施頻度を減らして実施

・SP3は継続して実施

・筋力トレーニングは筋力向上を目的とした強度にする

 

長距離・短距離選手共通の練習メニュー

・リカバリートレーニングの量と頻度を増やす

 

その他のトレーニング内容

・レースペース中にペース配分を模索する

・レースペース中は常にストローク頻度とストローク長を意識する

 

解説

この時期ではレースペースを中心としたトレーニングになります。

レースペースのトレーニングでは

ストローク長,ストローク頻度,ペース配分など

本番のレースに即した練習が行われます。

 

マクロサイクル4:テーパー期

目的

・大会に備える

 

トレーニングの詳細な内容

・全てのトレーニング強度を落とす

 

解説

テーパーについては

非常に多くの情報がありますので

今回は割愛します。

今後,特集します。

 

メゾサイクル

メゾサイクルはシーズンプランを立てるに当たって立案した

マクロサイクルをさらに分割化した単位を指します。

メゾサイクルを設定することで

以下のようなメリットがうまれます。

 

1.メゾサイクルの回復期に選手の能力を評価することで

 トレーニング効果を確認しやすい。

2.強化期と回復期に分けることで,オーバートレーニングを防ぎつつ

 高い強度の運動が実施できる。

3.メゾサイクルごとにトレーニングの対象となる身体能力を変えることで

 トレーニング効果が低下するのを防ぐ。

 同時に,選手のトレーニングに対する飽きを軽減する。

 

メゾサイクルの設定方法

1つのメゾサイクルは2〜8週で構成されます。

一般的には強化目的のトレーニング時期を「強化期」

回復を重視するトレーニング時期を「回復期」と分類し

強化期は1.5〜6週間,回復期は1.5〜2週間程度とります。

マクロサイクルの目標に応じて

メゾサイクルのトレーニング内容,量,強度を決めます。

 

メゾサイクルの強化期の組み立て方

メゾサイクルの強化期では2通りの負荷強度の設定方法があります。

 

1.段階的に強度を上げる方法

2.強度は一定で行う方法

 

段階的に強度を上げる方法は

選手の能力が急激に向上するシーズン初期に,

一定強度で行う方法はシーズンの中期以降に

じっくりと目的とする能力を高めるために実施します。

 

メゾサイクルの回復期の組み立て方

メゾサイクルの回復期では

強化期の50%程度まで運動強度を下げます。

これまで培ってきた能力を維持する程度の運動を継続します。

 

マクロサイクルとメゾサイクルを使ってシーズンプランを立てる

ある選手のシーズンにおけるマクロサイクルとメゾサイクルを立ててみました。

対象は100Fr1を専門とする短距離選手です。

目標とする大会までの期間は半年としました。

cycle.001

これはあくまで素案であり

このあとに毎週のトレーニング内容の決定や

全体の細かい修正を行っていきます。

 

おわりに

シーズンプランの設定は

シーズンが始まる前に行わなければいけません。

質の高いトレーニングを行うためにも

シーズンプランの作成には十分な時間を割きたいものです。


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コメント

  1. スイマー より:

    こんばんは。
    練習の組み方で質問てす。

    試合まであと20日くらいあるのですが試合までどんなスケジュールで練習を組んだらいいですか?

    種目はBrで100,200です。

    1. 水泳のメニュー作成者 より:

      コメントありがとうございます!

      スイマーさんの普段の練習量にもよりますが
      100,200mのBrであれば長距離系のテーパーでいいと思います。
      まず試合までの残りの時間で何を積み上げるか
      目的を明確にしてみます。

      〜目的〜
      私は
      1.これまでの練習の疲労除去
      2.レースプランの確認,微調整
      が主たる目的だと思います。

      1を達成するには,練習量を減らします。
      過去の文献では練習強度は下げない方がいいとする報告もありますが
      私は乳酸閾値以上のトレーニング(EN2など)の量は減らしています。
      その理由として,筋中のグリコーゲン量の枯渇を防ぐためです。

      2につきましては
      レースペースを実施します。
      本番と同じように本番で行うアップを行い
      万全の状態でレースペースを行うといいと思います。
      この時期ですと大幅なレースプランの変更は難しいので
      これまで検討したレースプランを確認していきます。

      〜具体的なスケジュール〜
      長距離選手であれば
      テーパーの期間は2週間で十分です。

      例えば2月14日を大会の日とすると
      以下のようなスケジュールはいかがでしょうか。

      1. 2/1〜2/10
      ・泳ぐ距離:通常の半分
      ・泳ぐ頻度:通常通り
      ・泳ぐ強度:通常通り(いたずらに下げすぎない)

      2. 2/11〜2/13
      ・泳ぐ距離:通常の1/4
      ・泳ぐ頻度:通常通り
      ・泳ぐ強度:非常に低い(ただしレースペースは実施)

      特に200Brなどは,比較的長時間の運動を強いられるので
      筋中のグリコーゲン量の低下などは避けたいです。
      そのため,私なら乳酸閾値以上のトレーニングは
      大会が近づくに伴いメニューから外し
      乳酸閾値以上のトレーニングについてはレースペース中心として組みます。
      練習距離は大会2週間前から少しずつ減らし,1週間かけて大体半分くらいまで減らします。

      テーパーについては過去の記事で少しまとめましたので参考にしてみて下さい。
      (参考記事:http://smart-exercise.net/tapering)

      もし追加でご質問がございましたら
      遠慮なくご質問下さい!
      お力になれましたら幸いです。

  2. yokoi より:

    こんばんわ!はじめまして!

    僕は大学で水泳をやっているものです。今年度のメニュー担当になったのですが、正直どうメニューを組んだらいいか迷っています。以下に今の部活の現状を列挙しますので、もし可能であれば現状を踏まえたアドバイスを頂きたいです。よろしくお願いします。

    1.プールが屋外であることと練習時間が17時~であるため、6月中旬までは中々距離を泳ぐことができません。(5/17時点で水温が20度前後、総距離は3000が最高です。)土曜日は10時~12時で練習しています。

    2.部員のレベルが非常にバラバラです。50Frが25秒代の選手もいれば1分近くかかる選手もいます。今は6コースあるプールを2コース×3にわけて練習しています。

    3.選手が30人、マネージャーは4人います。

    4.シーズンは5月~9月中旬で、10月~4月は温水プールを借りて週に2回泳いでいます。8月の中旬に多くの部員が照準を合わせている大会があります。

    以上になります。
    お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。

    1. 水泳のメニュー作成者 より:

      コメント頂きありがとうございます!
      コメントへの返答が遅れて申し訳ございません…

      お伝え頂いた現状を踏まえて一つずつ考えていきたいと思います。

      1.練習時間が限られている点について
       一回の練習距離が3000mとなると,特に長距離選手にとっては練習量が少ないと思います。対策としては,プールではドリル,メインスイム,ダウンを行い,ウォーミングアップの大部分を陸上(体育館など)で行う方法が考えられます。ウォーミングアップには,ただ走るのもいいですが,コアトレーニングやメディシンボールを使った運動がいいと思います。
       また,短時間で持久力を高めると考えられているトレーニングもありますので,試してみるのも手です。本ブログでも紹介している高強度インターバルトレーニングになります。非常に高負荷なので実施頻度には注意が必要ですが…。

      2.部員のレベルに差がある点について
       部員のレベルがかなり離れていますので,サークルのみを変えてみんなで同じメニュー行う日と,泳力ごとにメニューを分ける日を設定するとよいと思います。50Frを1分で泳ぐ人と50Frを25秒で泳ぐ人の練習の目的が,必ずしも同じになるとは限らないためです。比較的遅い人へはフォームのチェックなどに重点を置いたメニューを,速い人へはトレーニング強度を高めたメニューを,分けて行う日を設けてもいいと思います。

      3.シーズンプランについて
       8月中旬の大会をターゲットにした場合,テーパー開始は7月中旬,6月からはレースペースなどを積極的に行うスピード期に入ってくると思います。この時期は,短距離選手と長距離選手のメニューはわけ,短距離選手はスピードを高め,長距離選手は持久力を維持しつつ,レースペースでレースプランを再度検討する…といった形になるかと思います。この点については,チーム全体にメニュー担当者の考えを伝えて,練習メニューの目的をみんなで議論,共有するとよいでしょう。

      4.今後の対策など
       私が考える対策と今後の方針の一例を述べてみますね。
      可能であれば目標とする大会から逆算して,トレーニングプランを作成します。そして,トレーニングプランに沿って現在行うべきトレーニングの内容を決めていきます。トレーニングプランは部員で共有し,部員一人一人が練習の目的を明確にした上で,毎回の練習に臨めるようにします。練習時間が限られている以上,練習の精度を上げて勝負するしかありません。
       練習精度の向上にはメニュー作成者の運動生理学の知識と部員の意識改革,そしてマネージャーの協力が必須です。マネージャーには練習前に,練習の意図,お願いしたい仕事の内容を伝えます。タイムなのか,ストローク数のカウントなのか,フォームチェックなのか…練習内容によってマネージャーの仕事は変わります。
       まだ泳力が十分ではない人に対しては,水泳の技術を積み上げる日を作ってもよいと思います。コース編成は例えば1コースを技術練習コースとし,残りの5コースをトレーニングコースにするなど工夫します。

      とりあえず私が考えたプランとしてはこんな感じですがいかがしょうか。
      もし,さらに疑問や一緒に考えて欲しいことがありましたらコメント頂ければと思います。

      頑張って下さい!!

      1. yokoi より:

        お忙しいなかご返答頂きありがとうございます。

        非常に細かくアドバイスをして頂きありがとうございます!!
        アドバイスをもとに一度自分で考えてみます!

        また疑問点等が出ましたらコメントさせて頂きます!

        本当にありがとうございました!

        1. 水泳のメニュー作成者 より:

          メニュー作成はとても楽しい仕事だと思います。
          何かありましたら遠慮なくご連絡下さい。

          頑張って下さい!!

          1. yokoi より:

            こんばんは。

            5月にメニュー作成についてアドバイスを頂いたyokoiです。

            アドバイス通りメニューを作成したところ、8月の大会で部員全員がベストタイムを更新することができました!!本当にありがとうございました!

            それで本日もオフシーズンについてアドバイスを頂きたいと思いコメントしました。

            私が所属しているチームは、冬になると週1~2回温水プールを借りて練習していますが、他にも陸トレが入ってきます。
            オフシーズンの陸トレですが、どういった内容のことをすればいいのでしょうか?
            もし可能であれば、100Fr 1’00 で泳ぐ選手用のメニューを具体的に教えて頂きたいです。

            お時間のある時で構いませんのでよろしくお願いします。

          2. 水泳のメニュー作成者 より:

            ご質問頂きありがとうございます。
            また,返信が遅れてしまい申し訳ございません!

            陸トレの件ですが,
            水泳選手の陸トレに限らず,一般的にスポーツ選手の陸トレの目的は
            1.競技力の向上
            2.ケガの防止
            の二つになります。

            特に水泳選手はプールという非日常の環境で運動をするので
            2のケガの防止が重要になります。
            従って,オフシーズンはケガの防止を主たる目標にして
            1の競技力向上を目的とした陸トレをオンシーズンで出来るよう
            筋力のベースを作るとよいと思います。

            具体的には
            肩周りの筋(ローテーターカフ)の強化
            体幹筋の強化
            大胸筋,広背筋の強化
            の順に重要になると思います。

            これから少しずつですが
            筋トレにまつわる知識を整頓して記事にしてみますね。

            時間がかかるかもしれませんが
            ちょっと待ってもらえると助かります…

            宜しくお願いします!

  3. yokoi より:

    お忙しいところ、お返事ありがとうございます!

    なんとなくです、筋トレの意義はつかめたと思いますが、全く具体的な方法が思いつきません….。
    なので、首を長くして記事の更新を待ちたいと思います!
    よろしくお願いします!

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