筋力トレーニングは本当に水泳の競技力を高めるのか

今回は,水泳の競技力と筋トレの関連性についてです。

水泳の競技力向上に筋トレは有効なのでしょうか。

まず陸上で測定することができる筋力と

水泳のパフォーマンスの関係についてみていきます。

 

陸上で評価される筋力と水泳のパフォーマンスの関係について

陸上で評価される筋力と水泳のパフォーマンスに

何らかの関係性はあるのでしょうか。

例えばベンチプレスの重量が高いほど

水泳のパフォーマンスが高まるとすれば,

ベンチプレスの挙げる重量を高めるトレーニングをすればよいことになります。

 

筋トレと水泳のパフォーマンスに関するレビューを参考に

過去の研究をまとめます1)

 

・上肢のサイクルエルゴメーターを用いて最高パワー,平均パワーなどを測定。

 最高パワーと平均パワーは,50m泳の泳速と高い相関関係があった2)

 (つまり,最高パワーや平均パワーが高い人ほど,50m泳が速い)

 

・若年者においてベンチプレスの6RM (6回繰り返しあげることのできる重量) と

 25mもしくは50m泳のタイムとの間に中等度の相関を認めた3)

 (挙げることの出来るベンチプレスの重量が重たいほど,泳速が速い)

 

・ベンチプレス,ラットプルダウン,トライセプスプレスの1RM (1回のみ挙げれる重量) と

 泳いでひもを引っ張る時のひもを引っ張る力に相関を認めた。

 しかし,水泳のタイムと相関を認めたのはラットプルダウンだけ,かつ女性のみであった4)

 

研究の一部を紹介しましたが

陸上で評価される筋力と水泳のパフォーマンスについて

明確な結論は得られてないようです。

ベンチプレスを例にとっても

研究間で相反する結論が得られています。

 

では,筋力トレーニングを行った前後で

水泳のパフォーマンスはかわるのでしょうか。

 

筋力トレーニングが水泳のパフォーマンスに及ぼす影響

これも過去の研究を紹介します。

研究内容の概略をみていきます。

個々の研究については少し詳しく記載します。

とりあえず結論を知りたい方はまとめに飛んで下さい。

 

Giroldらの研究5)

被験者の群分け

筋トレ群

水泳のトレーニングに加え,筋トレを追加

 

スプリントトレーニング群

水泳のトレーニングに加え,水中にてロープを用いたスプリントトレーニングを実施した群

 

コントロール群

水泳のトレーニングに加え,サイクリング運動を行った群

 

筋トレ群でトレーニングを行った筋

上腕二頭筋,上腕三頭筋

背筋,大胸筋,三角筋

大腿四頭筋,殿筋,下腿三頭筋

 

トレーニング方法

上肢筋のトレーニングにはバーベルを使用

(使用重量は最大負荷の80〜90%)

下肢筋のトレーニングにはスクワット,プライオメトリックジャンプを実施

 

トレーニング頻度

週2回12週実施

 

結果

12週後50m泳のタイムは

筋トレ群とスプリントトレーニング群で改善

 

Aspenesらの研究6)

被験者の群分け

筋トレ群

水泳のトレーニングに加え,筋トレを追加

 

コントロール群

水泳のトレーニングのみを行った群

 

筋トレ群のトレーニングメニュー

バタフライのストロークを模したスイムベンチ

 

動員される筋肉

広背筋、上腕三頭筋、ローテーターカフ

 

トレーニング方法

5回繰り返すことが出来る最大重量の運動を

3セット実施

 

トレーニング頻度

週2回11週実施

 

結果

筋トレ群では

400m泳のタイムが改善し

50,100m泳のタイムは改善しなかった。

 

Garridoらの研究7)

被験者の群分け

筋トレ群

水泳のトレーニングに加え,筋トレを追加

 

コントロール群

水泳のトレーニングのみを行った群

 

筋トレ群のトレーニングメニュー

ベンチプレス、レッグエクステンション

メディシンボール、カウンタームーブメントジャンプ

 

ベンチプレス、レッグエクステンションの使用重量

50~75% 6RM

6~8回を2~3セット

 

トレーニング頻度

週2回8実施

 

結果

25mの泳速は「筋トレ+水泳トレーニング群」のみで

有意に改善。

50mの泳速は「筋トレ+水泳トレーニング群」と

「水泳トレーニング群のみ」のともに改善

 

筋トレと水泳の練習との併用が

水泳の練習単独よりも水泳のパフォーマンスを

有意に改善するとした結果にはならなかったが

筋トレと水泳のトレーニングの併用が

スプリント能力に有効な可能性はある。

 

まとめ

Pedroらのレビューを参考に

筋トレと水泳のパフォーマンスの関連を検討しました。

彼らのレビューでは

結論としてまだ検討の余地はあるものの

筋トレによって特に短距離選手のタイムが改善する可能性を

示唆しています。

 

個人的な意見

私も筋トレは水泳のパフォーマンスに影響を及ぼすものと考えています。

スプリント能力はストロークパワーと密接に関係し,

ストロークパワーは「筋力」と「速度」の積でした。

 

水泳に最適な筋力トレーニングプログラムは不明ですが

泳いでいる最中に大きな負荷がかかる筋,

急速な収縮が必要な筋について

筋肥大もしくは筋パワートレーニングを行うことは有効だと思います。

 

一方で,ボディビルダーの人が速く泳げないのと同じように

筋トレでトレーニングした個々の筋肉を

水泳で使えるようにしなければならないです。

具体的に言うと

理想とするストロークにはどの順番で筋を動員するのか

どれくらいの筋瞬発力が必要なのか

どれくらいの筋収縮力が必要なのか

などです。

 

従って,

筋トレをしたあとには

筋肉に水泳の動きを学習させるためのトレーニングが必須と考えます。

それは,パドルスイムであったり,各種スプリント練です。

 

おわりに

今回は筋トレが水泳のパフォーマンスに及ぼす影響について

過去の文献を参考に概説しました。

一致した結論は出ていないものの

特に短距離選手には筋トレは有効な可能性はあります。

スプリンターは筋トレを導入してみてもいいと思います。

 

最後におまけとして

クロールを泳ぐ際に活動する筋肉をまとめた報告がありましたので

補足資料として記載しておきます。

この資料をもとに筋トレで狙う筋肉をピックアップし

トレーニングプログラムを構築するのもよいかと思います。

 

補足資料

泳ぐ際に活動する筋の報告がありましたので

ご紹介致します8)

 

① 水泳で使う筋肉 〜上肢の筋〜

1. キャッチ

 僧帽筋上部線維:肩甲骨挙上

 菱形筋:肩甲骨の後方移動

 前鋸筋:肩甲骨の前方移動,回転運動

 

2. キャッチ直後

 大胸筋:上腕の内転

 小円筋:肩関節内旋運動の制御

 烏口腕筋:上腕の屈曲

 上腕二頭筋:上腕の屈曲

 

3. ストロークの中間点からフィニッシュまで

 広背筋:水を押す(上腕,前腕の複合運動)

 肩甲下筋:水を押す(上腕,前腕の複合運動)

 烏口腕筋:上腕の屈曲  上腕二頭筋:上腕の屈曲

 

4. フィニッシュ

 上腕三頭筋:肘関節の伸展

 

5. リカバリー

 三角筋:リカバリー動作

 棘上筋:リカバリー動作

 

〜下肢の筋〜

1. キック(下肢を上げる時)

 殿筋群:股関節伸展

 大腿二頭筋:股関節伸展

 半腱様筋:股関節伸展

 半膜様筋:股関節伸展

 薄筋:股関節伸展

 

2. キック(下肢を下げる時)

 腸腰筋:股関節屈曲

 大腿四頭筋:股関節屈曲,膝関節伸展

 

参考になれば幸いです。

 

参考文献

1)Pedro GM. et al., Effects of dry-land strength training on swimming performance: a brief review. J Human Sport & Exercise. 2012; 7 (2):553-559

2)Hawley JA, et al.,  Relationship between upper body anaerobic power and freestyle swimming performance. Int J Sports Med. 1991; 12:1-5

3)Garrido N. et al. Does combined dry land strength and aerobic training inhibit performance of young competitive swimmers? J Sport Sci Med. 2010; 9:300-310.

4)Crowe SE. et al., The relationship of strength to dryland power, swimming power, and swimming performance. Med Sci Sports Exerc. 1999; 31(5):S255.

5)Girold S. et al., Effects of dry-land vs. resisted- and assisted-sprint exercises on swimming sprint performances. J Strength Cond Res. 2007; 21:599- 605.

6)Aspenes S. et al., Combined strength and endurance training in competitive swimmers. J Sport Sci Med. 2009; 8:357-365.

7)Garrido N. et al., Does combined dry land strength and aerobic training inhibit performance of young competitive swimmers? J Sport Sci Med. 2010; 9:300-310.

8) Journal of the international society of swimming coaching, vol 2, issue 1, 2012

 


SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA