スタティックストレッチは競技パフォーマンスを改善するのか

今回はストレッチ,

特にスタティック・ストレッチについて考えます。

水泳の大会などで何気なく行っている人を目にしますが

このスタティック・ストレッチは大会前に行っても問題ないのでしょうか。

ストレッチの方法を確認した上で、

ストレッチのウォーミングアップ効果について議論します。

ストレッチの目的

まず、ストレッチの目的を列挙します1)

 

1. 関節可動域制限 (柔軟性) の改善

2. 筋緊張の低下

3. 疲労回復

4. 血流増加

5. 障害予防

6. スポーツパフォーマンスの向上

 

少々専門的な単語が並びましたが

つまりは,ストレッチを行うことで

「筋肉が柔らかくなったり,関節が動きやすくなる」

「ケガが起こりにくくなる」

ということです。

また,疲労回復にも有効なようですが、少々怪しいと私は思います。

 

スタティック・ストレッチの正しい方法

 

スタティック・ストレッチは

反動をつけずにじっくり筋肉を伸ばすストレッチであり

安全性が高いストレッチとして広く認知されています。

 

反動をつけずに筋肉をゆっくりと伸ばすのがポイントです。

伸ばす時間については,

文献によって多少違いがありますが2,3) 

おおよそ15〜60秒です。

これを2〜4回行います。

 

重要な留意点としては,

15秒以下ではストレッチの効果が望めないことです。 

 

 

スタティック・ストレッチのウォーミングアップ効果

さて、スタティックストレッチは

大会の直前に行ってもいいのでしょうか。

スタティック・ストレッチに関する

総説が出ていますので, それらの総説の結論を引用してみます。

 

Simicらの総説より4)

・スタティック・ストレッチは最大筋力や筋発揮力に対してネガティブな効果を与える。

(つまり、最大筋力や筋発揮力が低下していまうということ)

・45秒以内のスタティック・ストレッチではネガティブな効果は最小。

・ウォーミングアップにスタティック・ストレッチ単独を行うことはすすめられない。 

 

Anthonyらの総説より5)

・45秒以内のストレッチは,筋力や速度に依存した課題成績を低下させることはなかった。

・60秒以上のストレッチは,小〜中程度に課題成績を減少させる。

 

結論

スタティック・ストレッチをウォーミングアップに組み込むことで

筋力発揮が低下してしまうことは昔から言われてきていました。

また,比較的新しい二つの総説でも スタティック・ストレッチを行うことで

筋力が低下してしまうことを報告しています。

 

従って,

水泳の大会などでウォーミングアップに

スタティック・ストレッチを入れることは望ましくない、

もしくは伸ばす時間を45秒以内にとどめるべきだと考えます。

 

 

スタティック・ストレッチの傷害予防効果

ウォーミングアップの目的としてパフォーマンスの向上もありますが、

傷害予防も大きな目的の一つです。

スタティック・ストレッチの傷害予防効果ですが、

実はその効果は完全に明らかになっていません。

 

いくつかの研究結果を羅列すると

・ウォームアップにストレッチを取り入れても下肢の傷害発生予防に寄与しない可能性がある6)

・ハムストリングスの柔軟性が低いサッカー選手は傷害のリスクが低い7)

・運動前の激しいストレッチは傷害予防には効果的ではない8)

 

以上のようにスタティック・ストレッチの傷害予防効果については

一定の見解が得られていないのが現状です。

 

まとめ

スタティック・ストレッチは

大会のウォーミングアップに組み込むのは控えるか

実施時間を45秒前後に限定した方がよさそうです。

また,傷害予防効果については諸説あり、統一した見解は得られていません。

しかし,柔軟性を必要とする関節などに対して

日常的にスタティック・ストレッチを行うことは

傷害予防に意味のあることだと思います。

 

参考文献

1) 市橋則明 著:運動療法学, 文光堂, 2008 

2) American College of Sports Medicine: Guidelines for exercise testing and prescription (7th ed.) ; Baltimore Lippin- cott Williams and Wilkins, 2005

3) Essentials of strength training and conditioning (3rd ed.); Baechle, T.R. and Earle, R.W, 2008 

4) Simic L. et al., Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review. Scand J Med Sci Sports 23 : 131-148, 2013

5) Anthony D. et al., Effect of acute static stretch on maximal muscle performance : a systematic reveiw. Med Sci Sports Exer 44, 154-164, 2012

6) Pope RP. et al., A randomized trial of preexercise stretching for preventation of lower-limb injury. Medicine and Science in Sports and Exercise 32 : 271-277, 2000

7) Witvrouw E. et al., Muscle flexibility as a risk factor of developing muscle injuries in professional male soccer players. American journal of sports medicine 31 : 41-46, 2003

8) Weldon SM. & Hill RH. The efficacy of stretching for prevention of exercise-related injury : a systematic review of the literature. Manual Therapy 8 : 141-150, 2003


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