水泳大会のウォーミングアップ方法はどうするか

水泳の大会でウォーミングアップをどうするか…

練習メニューでウォーミングアップをどうするか…

一度は必ず迷ったことがあると思います。

今回はウォーミングアップについて考えていきます。

まず,基本的なことから確認します。

ウォーミングアップは何故行うのでしょう?

 

なぜウォーミングアップを行うのか

ウォーミングアップは必ず行え,といわれます。

何故でしょうか。

ウォーミングアップを行う意義については

以下のようにまとめられています1)

 

1. 体温,筋肉の温度が上昇する

2. 関節の可動性や筋の柔軟性が高まる

3. 中枢神経系の興奮が高まる

4. 俊敏な動きが可能となる

5. 集中力が高まる

 

これらの項目の内容をまとめると

ウォーミングアップの目的として

 

1. ケガの防止

2. パフォーマンスを高める

 

という,当たり前ですが重要な目的が浮かび上がります。

 

ウォーミングアップの分類

ウォーミングアップは,

「水泳大会の日のウォーミングアップ」と

「マスターズや大学の練習でのウォーミングアップ」

に大別されると思います。

 

通常の練習時のウォーミングアップは非常に重要ですが,

まずは水泳大会の日のウォーミングアップからみていきます。

大会当日のウォーミングアップの方法を理解し,

その中の重要な要素を取り出し簡略化したものを

通常の練習時のウォーミングアップに反映させればいいと考えています。

 

大会におけるウォーミングアップの方法

2003年の吉村先生(中京大)の記事では,

大会当日のウォーミングアップについて以下のようにまとめられています2)

 

・ 中強度以下の運動強度で基本的な構成を行う

・ レースペースなどの高強度の内容を実施する場合は,実施回数,運動時間,休憩時間を調節する

・ ウォーミングアップ実施のタイミングは  

  ウォーミングアップ終了から競技開始までの待ち時間が20〜60分程度になるよう配慮する

・ ウォーミングアップ終了後の待ち時間が30分を超える場合は,  

   ストレッチングなどの軽度エクササイズや衣服の着脱などにより体温の急激な低下の防止に努める

 

さらに 2014年(現時点で最新)の大会時ウォーミングアップに関するNeivaらのレビューでは

以下のようにまとめられていました3)

 

・ 距離:1,000〜1,500m(15〜20分)

・ 強度:中強度 (65〜70%VO2max程度?)

・ ドリルはストローク効率に焦点をあてる

・ 短い距離のレースペースを実施する

・ ウォーミングアップの効果は8〜20分持続する

さて,それぞれの項目についてさらに深く考えていきましょう。

 

1. ウォーミングアップの距離について

Neivaらのレビューにおける推奨距離は1,000〜1,500mでした。

このレビューで引用されている過去の研究を紹介します。

 

Balilionisらの研究4)

45.7m(50ヤード) のタイムトライアルを実施。

その際のウォーミングアップの距離を2通り設けて結果を比較した。

ウォーミングアップの距離は以下の通り。

 

1. 91.4m (100ヤード) のウォーミングアップ

2. 約1300mのウォーミングアップ

 

〜結果〜

50ヤードのタイムは

91.4m (100ヤード) のウォーミングアップで25.26±1.61秒

約1300mのウォーミングアップで24.95±1.53秒

従って, 約1300mのウォーミングアップの方が有意に記録が改善した

 

Arnettらの研究5)

91.4m (100ヤード) のタイムトライアルを実施。

その際のウォーミングアップの距離を2通り設けて結果を比較。

ウォーミングアップの距離は以下の通り。

 

1. 2011.7m

2. 4023.4 m

 

〜結果〜

有意な差はみられなかった。

(約2,000mと4,000mでウォーミングアップの効果に差がなかった)

 

~寸評~

これらの研究より,

ウォーミングアップは短すぎては効果がなく

長すぎても効果が高まることはないことが分かります。

 

2. ウォーミングアップの強度について

これは文献を直接入手出来ていません…

Neivaらのレビューの記載を日本語訳します。

 

・高強度のウォーミングアップを行ったあとの方が,乳酸の蓄積量が多い6)

・短い距離のレースペースを反復することで,パフォーマンスの改善が得られる7)

 

~寸評~

高強度の運動をウォーミングアップに組み込みすぎると

体が疲労してパフォーマンスが低下するようです。

その一方で,レースペースを実施することでパフォーマンスが向上することも示唆されています。

これらの先行研究を踏まえ

Neivaらは徐々に泳ぐ速度を上げていくbuild upをメニューに組み込み,

レースペースを短い距離で実施することを提言しています3)

 

3. ウォーミングアップの効果の持続時間について

研究は色々あるようですが,一つだけピックアップします。

 

Zochowski らの研究8)

1500mのウォーミングアップを行った後に

10分もしくは45分の間をあけて200mのタイムトライアルを行った

この時のウォーミングアップの内容は以下の通り。

 

300m easy swim

100×3 pull 1’40 (75 hypo 1/5, 25m strong)

100×3 kick 1’50

50×5 2set swim  25m fast / 25m easy  50 lowest stroke count  50 build speed throughout  

50×2 at 200 race pace

100 loosen

 

〜結果〜

・10分間を空けた時のタイム 136.80±20.38秒

・45分間を空けた時のタイム 138.69±20.32秒

従って,10分間を空けた時のタイムが有意に速かった

 

~寸評~

ウォーミングアップの効果は時間経過とともに失われていくこと

特に45分も経過してしまうと

ウォーミングアップの効果がかなり低下していることが分かります。

 

大会のウォーミングアップのまとめ

大会当日のウォーミングアップの内容について,

これまでの内容を改めてまとめてみます。

 

1. 距離  1,000〜1,500m (15〜20分)

2. 強度  中強度を中心とする  

     ※ただし,短い距離のレースペースを組み込むこと

3. ウォーミングアップの持続時間  8〜20分程度  

     ※30分を越える場合は軽度のエクササイズや衣服の着脱などで体温の急激な低下を防ぐ

 

これらの項目を踏まえ,大会当日のサンプルメニューを作ってみました。

対象はマスターズに所属,

100m Frにエントリー,目標タイムは1’00とします。

 

サンプルメニュー

Swim  

 50×4 1’00 Fr  

 50×4 1’10 IM-order

Kick  

 50×4 1’20 no-board kick  

 50×2 1’10 kick swim

Drill  

 25×4 ’50 stream line drill or sculling

Swim  

 50×6 1’00 forming  

 50×2 1’30 build up to race pace  

 50×2 2’00 race pace

Swim (dive)  

 12.5×2 dive

Down  

 50×4 1’10

total distance : 1650m

 

~解説~

私はウォーミングアップに

全身を動かす個人メドレー (IM : individual medley) を入れるのが好きです。

しかし、 いきなりバタフライをすると肩への負荷が大きいため,

まずはフリーからスタートします。

次に,ストリームラインを意識しながら板なしでキックを打ちます。

キックの確認のみならず、

キックで働く大腿四頭筋などの下肢筋群はボリュームがあるため,

キックを打つことで体が温まる効果を狙っています。

ドリルでは,スカーリングを中心に水の感覚を研ぎ澄まします。

レースペースはレストを多くし,一本一本集中して行います。

 

ざっとこんな感じです。

一概にウォーミングアップといっても,とても奥が深いですね。

通常のメニューのウォーミングアップについては 次回にしたいと思います。 

 

 参考文献

1) 大塚潔. トレーニング・ジャーナル 36 (3): 46-50, 2014

2) 吉村豊. トレーニング・ジャーナル 25(10): 20-22, 2003.

3) Neiva H.P. et al., Warm-up and performance in competitive swimming. Sports Med. 44(3) : 319-30, 2014

4) Balilionis G, Nepocatych S, Ellis CM, et al. Effects of different types of warm-up on swimming performance, reaction time, and dive distance. J Strength Cond Res. 2012;26(12):3297–303.

5) Arnett MG. Effects of prolonged and reduced warm-ups on diurnal variation in body temperature and swim performance. J Strength Cond Res. 2002;16(2):256–61

6) Mitchell JB, Huston JS. The effect of high- and low-intensity warm-up on the physiological responses to a standardized swim and tethered swimming performance. J Sports Sci. 1993;11(2):159–65.

7) Bishop D. Warm up I: potential mechanisms and the effects of passive warm up on exercise performance. Sports Med. 2003;33(6):439–54.

8) Zochowski T, et al., Effects of varying post warm-up recovery time on 200m time-trial swim performance. Int J Sports Physiol Perform. 2007;2(2):201–11.


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