水泳の練習メニュー:スプリント能力とは何だろう

今回はスプリントトレーニング、スピードトレーニングについてです。

スプリントトレーニングとは

一体どのようなトレーニングを指すのでしょう。

スプリント能力とは何か

スプリントトレーニングの目的はどこにあるのか考えていきます,

スプリント能力とは

スイミングファーステストには

スプリント能力について以下のように記載されています。

 

スプリント能力とは

「レース序盤を速く泳ぎ,全力に近いスピードを維持する能力」

 

では,スプリント能力はどのように評価するでしょうか。

 

スプリント能力を評価する指標

結論としては、

スプリント能力を評価する明確な生理学的評価指標はありませんでした。

持久力の評価指標としては「最大酸素摂取量」 「乳酸閾値」などがありましたが

スプリント能力については評価指標はないようです。

 

スプリント能力を評価する生理学的指標はないですが

スプリント能力を反映する成績については

以下のような指標が挙げられるかと思います。

 

1.最大泳速

2.最高速度を維持できる時間(速度を維持する能力)

 

すなわち、

スプリント能力が高い人は

最高速度が速く、かつその速度を維持できる能力が高いということです。

 

では、

最大泳速の向上に関わる要因とは,

速度の維持に関わる要因とは

どのようなものでしょうか。

それぞれについて考えてみます。

 

最大泳速を上げるために必要なこと

速筋線維の動員

筋肉には, ゆっくり収縮し持久力が高い遅筋と,

素早く力強く収縮できるもののすぐにバテてしまう速筋があります。

トレーニングによって筋肉中の速筋線維が占める割合が多くなれば,

大きな力を発揮でき,最大泳速が上がる可能性があります。

 

速筋線維を増やすには?

速筋線維と遅筋線維の割合は遺伝的に決まっているといわれています。

しかし,トレーニングによって速筋線維の筋断面積は増加しますので,

速筋線維を運動に動員することで,

速筋線維の断面積増加,筋肉の肥大を狙うことになります。

 

速筋線維は乳酸閾値以下ではあまり運動に動員されず,

乳酸閾値以上の運動強度で動員されます2)

よって,最大泳速の向上を目指すには

速筋が動員される乳酸閾値以上の運動が効果的でしょう。

 

速度を維持できる時間を増やすために必要なこと

筋緩衝能の改善

途中で泳速が低下しないためには,

何を対象としてどのようなトレーニングをするべきなのでしょうか。

これについては筋緩衝能が候補として考えられています。

 

筋緩衝能とは,

高強度運動によって生じた水素イオンの増加に伴う筋pHの低下を抑制し,

pHの恒常性を保とうとする働きを指します3)

 

高い筋緩衝能があれば,

高強度運動の終盤でも筋pHの低下を抑制でき,

エネルギーの産生速度や筋収縮力の低下を遅延できます。

 

従って、筋緩衝能が高い人ほど高強度運動の成績が高いと考えたくなりますが

筋緩衝能と高強度運動の成績には関連性があるとした報告と3,4,5)

関連がないとした報告もあり6)

明確な結論は得られていない状況です。

 

どちらの結論であったとしても

スプリントトレーニングの内容を考える上で

参考になる概念だと思います。

 

筋緩衝能を高めるためには

筋緩衝能は, 筋肉中に含まれる速筋線維の割合と正の相関関係があるようです4)

従って,速筋線維が多いほど筋緩衝能が優れていることが示唆されます。

速筋線維が動員されているのは

先に述べた通り乳酸閾値を超えた強度からですので,

速筋線維を増やし,筋緩衝能を高めるためには,

乳酸閾値以上の高強度トレーニングが必要となってきます。

 

スプリントトレーニングを考える

スプリント能力とは何か、

スプリントトレーニングとは何か、これまで概説しました。

では、実際にどのようなトレーニング方法があるのでしょうか。

 

スプリントトレーニングの目的と方法

スイミングファーステストでは,

スプリントトレーニングの目的について以下のようにまとめられ,

SP1〜SP3のトレーニングカテゴリーが紹介されています。

なお、SP1~SP3のトレーニングカテゴリーについては

以前の記事も参考にしてください。

(参考:スイミングファーステストのトレーニング分類(スプリント編))

 

1. スプリントトレーニングの目的

・スプリント能力の向上:レース序盤を速く泳ぐため

・乳酸耐性の向上:全力に近いスピードを維持するため

 

2.スプリントトレーニングの方法

スイミングファーステストではSPと呼ばれるトレーニングカテゴリーで紹介されていました。

さらに

スイミングファーステスト以外でも

2010年のIaiaらの総説でスプリントトレーニングの方法が紹介されていましたので紹介します1)

 

・Speed training  

運動強度:全速力 (100%)  

運動時間:2〜10秒  

休憩時間:50〜100秒  

反復回数:5〜20回

 

・Speed endurance production  

運動強度:全速力の70〜100%  

運動時間:10〜40秒  

休憩時間:運動時間の5倍以上  

反復回数:3〜12回

 

・Speed endurance maintenance  

運動強度:全速力の50〜100%  

運動時間:5〜90秒  

休憩時間:運動時間の1〜3倍  

反復回数:2〜25回

 

スイミングファーステストのSP3がspeed training,

SP2がSpeed endurance training,

SP1がSpeed endurance maintenance trainingに該当すると思います。

これをみると スプリントトレーニングでは

いずれのトレーニングカテゴリーでもほぼ全力で泳いでいます。

違いは運動継続時間とレスト時間です。

 

まとめ

スプリントトレーニングの目的として

速筋線維を動員することが重要であるようです。

速筋線維は乳酸閾値以上の強度の運動で動員されるため,

トレーニング強度には注意を払う必要があります。

 

参考文献

1) Iaia FM et al., Speed endurance training is a powerful stimulus for physiological adaptations and performance improvements of athletes. Scand J Med Sci Sports. 20 : 11-23, 2010

2) 八田秀雄 著,乳酸と運動生理・生化学 -エネルギー代謝の仕組み-,2009

3) 宮村実晴 編集,身体トレーニング-運動生理学からみた身体機能の維持・向上-,2009

4) Parkhouse WS et al., Buffering capacity of deproteinized human vastus lateralis muscle. J Appl Physiol, 58 : 14-17, 1985

5) Edg EJ et al., Comparison of muscle buffer capacity and repeated-sprint ability of untrained, endurance-trained and team-sport athletes. Eur J Appl Physiol. 96 : 225-234, 2006

6) Mannion AF et al., Skeletal muscle buffer value, fibre type distribution and high intensity exercise performance in man. Exp Physiol, 80 : 89-101, 1995 


SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*

CAPTCHA